第9話 なにも知らない初戦闘2

「シューヤさーん!」


 うしろからリリーの声が近づいてくる。

 そうか、俺は勝ったのか……。

振り返り、飛びついてきたリリーを受け止めた。


「心配したんですからぁー」

「ごめん、ごめん。でもほら、リリーがくれた籠手のおかげでちゃんと勝てただろ?」

「そうですけども……」


 寂しそうな顔をするリリーの頭を撫でてやった。

 ほんと、この子は可愛いな。

 そんなことをしていると、周りがだんだん騒がしくなってきたことに気がついた。

そこで、遠くから近づいてくる一人の女性の姿が目に入った。


「おいおい、嘘だろ……。リリー、逃げるぞ!」

「ちょっと、シューヤさん!?」


 無理やりリリーをお姫様抱っこし、走り出した。

 やばい、やばい、やばい!あの人この前ぶつかっちゃった人じゃん!あのまま会ってたら俺、切り刻まれてたかも!?


「シューヤさん、強引すぎますよ……」


 頬を赤らめながら襟をぎゅっと掴んでくる。


「ごめん、でも今はこうするしかないんだ」

「どうしてですか?」

「俺、狙われてるかもしれないんだ」

「どなたにですか?」

「——恐ろしい暗殺者にだ!!」

「えぇ!?どういうことなのかよく分かりませんが、早く街に帰りましょうよ!」


 こうして、俺は別の入り口まで全速力で走った。

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