第8話 なにも知らない初戦闘1
俺が拳を構えると、魔獣は剣を捨て、同じポーズをとった。武士道というやつなのだろうか。まぁ、剣を持っている敵を相手にするよりは、ちょっとはマシなのかな……。
深く息を吸い込み、覚悟を決める。
黒い炎のようなものがヒトの形を作っているものだが、それは実体はあるのだろうか。
そんな不安を抱えながら強く拳を握りしめ、一気に距離をつめた。
「まずは一撃ぃぃっ!!」
走ってきた勢いを拳にのせ、大きく振りかぶった一撃。これならば多少のダメージは確実に与えられるだろうと思っていた矢先——
「……っ!」
その拳はいとも容易く受け止められてしまった。それも片手で。
このあとどうやって対処しようか。なんて考えさせる隙も与えられないくらいの速度で魔獣は俺を投げ飛ばした。まるで小石を投げるかのように軽々しく投げ飛ばされた俺は、街の外壁まで届いた。
「シューヤさん!!」
上からリリーの声が聞こえてくる。
そうだ。俺は負けてられないんだ……!
ふらつく足でなんとか立ち上がり、再び拳を構える。
「あくまでも俺の攻撃を待つつもりなのか……」
強者の余裕というものなのだろうか。
魔獣は追撃などしてこずに、じっと俺が立ち上がるのを待っていた。
まぁ、触れられるってことが分かっただけマシか。
相手は動きだす気配もなく、じっとこちらの出方を観察しているようだった。
このまま時間を稼ぐのが正解か、それとも、俺があいつに勝てるかもしれないというわずかな希望に賭けるのが正解か。答えは一つだった。
「ジム通いのおっさんをナメんなぁぁ!!」
先よりも素早く、一気に距離をつめる。
そして、殴ると見せかけて相手の懐に入った。
——これでキメるッ!!
俺の拳は相手の腹部に直撃し、魔獣は倒れた。
「終わったのか……?」
体中の力が一気に抜け、俺は膝をついた。
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