第4話 なにも知らない変態⁉︎
「ところで、シューヤさんはこれからどうするつもりですか?」
「どうするって?」
「この世界でお金を稼いで生きていくためには、ハンターになるか自分でお店を開くかのどちらかなんですよ」
「なるほど……」
少し考えた。もしかしたらこの選択で今後の人生が大きく変わるのではないのかと思ったからだ。
「ちなみにリリーはどっちをやってるの?」
「私はハンターです。と言っても簡単な依頼しか受けてないんですけどね」
少し恥ずかしそうに答えた。
やはりハンターを選ぶほうが多数なのだろうか。自分で店を開こうにも、この世界の知識が無いからできることが限られる気がする。
「よし、じゃあ俺もハンターにするよ」
「えっ、本当にいいんですか!?別に私に気を使わなくても大丈夫なんですよ!?」
「それしか俺ができそうなことが無いってだけだよ。そのハンターってのはどこで就職できるんだ?」
「就職……ですか。変な言い方するんですね」
そう言って、クスクスとリリーが笑った。
なにか変なことでも言ってしまったのだろうか。
そんなことを思いながら、リリーの話に耳を傾けた。
「ハンターに登録するには街の中心にあるギルドに行く必要があります。そこで自分のランクや氏名などを記載されたハンターカードを貰ってください。そのあとは掲示板に貼られた依頼を受けて、それに応じた報酬をもらう……と言ったところでしょうか。仕組み自体は簡単なんですよ」
ハンターカードは名刺のようなものなんだな。異世界に転移したなんて知ったら同僚の田中が羨ましがるだろうなー。そういえば、けもみみっ
「それじゃあ早速ギルドに行きたいんだけど案内してもらっていいかな?」
「もちろんです!」
・ ・ ・
「へぇー、ここがギルドかー」
木造建築の大きな建物で、なんだか雰囲気があってとても良い。道中にリリーから聞いた話の通り、ハンターたちの酒場でもあるらしく、昼間っから大男たちが酒を飲んだりバカ騒ぎしている。
もっと怖い人たちだったらどうしようと思ってたけど一安心だな……。
ホッと胸を撫で下ろした。
「シューヤさん、ほら、早く受付に行きましょう!」
「はいはい」
先からリリーがやけにハイテンションだ。
だが、それとは裏腹に酒場中が一気に静まりかえった。彼女の声を聞いてからだ。
謎の緊張感を孕んだこの空間で、いろいろな声が耳に入ってきた。
「おい、あの男もしかしてリリーちゃんの耳を触ったっていうヤツなんじゃないか?」
「マジかよ。エルフの耳に急に触るってことは……」
「エッチだ……」「ヘンタイだ……」
「クズね」「変質者よ」
全員が声を揃えてそう言ってきた。
なるほど。その話がもうこんなところまで広まってたのか。確かに、知らなかったとはいえ俺にも多少は非があるだろう。
——でも一つだけ言っておきたいことがあるんだ……。
「触られてエッチなものを表に出してんじゃねぇぇぇッ!!」
俺の魂の叫びに恐れたのか、話をしていた者たちは何事もなかったかのように再び酒に手を伸ばし始めた。チラチラと横目で俺のことを見てくる輩も少しばかりいるようだが、そんなのは気にしなかった。
「よし、言ってやったぜ」
「『言ってやったぜ』じゃないですよ!恥ずかしいからやめてくださいよ!もーー!」
「あっ、ごめん。ついカッとなっちゃって」
「別に怒ってるわけじゃないですけど、女の子はそういうの恥ずかしいんですからね」
俺の前を先導するかのように歩いていたリリーがいつの間にか横にきて、俺の腕に抱きつくかのようにしてくっついていた。
頬を膨らませて拗ねるその姿が桜田先輩と重なる。
忘れられるわけないもんな……。
「ほら、変質者さん、早く登録しますよ」
「いや、結構怒ってるよね!?」
そんなリリーに引っ張られ、俺は受付嬢のもとまで連れていかれた。
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