BL二次創作をしてたら、物語にシンクロしてラブラブになった話

きょん

第1話

甘ったるいBLの二次創作を約一年前から始め、ただいま少しお休みしている。

 

 何作品書いたかというと、5000文字から10000文字くらいのものを50作品くらい。自己満足のレベルと自覚しつつ、自分の言葉を読み返すたびに、喜びに浸る。

頭の中のイメージを言葉にして表して、あるのか、ないのか程度のストーリーを形づくる。そして、この飽きっぽさと眠気とうまく付き合いながら、終わりまで書き上げる。この、一つの話を最後まで書くことが、もしかしたら一番大事なことなのかもしれない。出来不出来は置いといて。最大の喜びであり、褒めポイントだ。


 ずっと自分が書いたものを読んで見たかった。何でも良かった。

一番最初に書いたものは、大げさだけど、このまま何も書かないで死ぬのだけは嫌だ、という物凄い焦燥感とエネルギーで書いた。そのせいか、一番読まれている。タイミングなどがよかっただけかもしれないが、やっぱりエネルギーを込めたものというのは、どこかしら、何かしら読んだ方に伝わるものがあるのかもしれない、と思い込んでいる。

 次第に書き慣れてくると緊張感は薄れて、楽しめた。同人誌等の活動どころか、どこにもリンクしていないのに、何話も読んでくれる方がいて、とてもありがたい、としみじみ思う。別のカップリングを書く気もないし、今後、二次小説は要望があれば書こうかなという感じのゆるい衝動しかないが、書くことは続けるつもりだ。


妄想も性癖も出していかないと、身体に毒とばかりに。


さて、そんなこんなで一年ほど書いてきて、変わったことがある。

それが、タイトル通り、パートナーとの関係だ。


二次小説の創作に熱中していたこともあり、気が付いた時には、ガラリと変わった後だったため、途中経過が吹っ飛ぶ。なので説明しがたいが、かつてない恋愛状態にいる。


自分の小説で書かれているのは、とにかく好きで好きでたまらない、という話だ。

どうしようもなく恋におちていて、世界を丸ごとくれると言われても、この相手をモノに出来なければ、何の意味があるのか、と相互的にイカレている。よく言えば、初恋の純粋さのままお互いを求めて生きている。

うん、そう。

なんせ、甘々のハッピーな話しか書かんもん。

死ネタとか怖くて、傷つきそうで読めんもん。

書いてるカップリング限定ですが。

それ以外は、オリジナルにしても何でも普通に美味しくいただけます。いじめ、とか執着双子とか、暴力的なのもありです。漫画も小説も大好きです。なので、頭の中は酸いも甘いも混在していて、甘々だけじゃなかったんだと、思う。


しかし、創作することで、脳ミソ、そっち寄りになっちゃったんかな。

ホント聞きたい。

書いているジャンルに現実喰われませんか?

ホラー作家は何か恐ろしいもの召喚しちゃってませんか?

スティーブン・キングはどんな人生を生きてきたか、考えちゃう。アルコールを入れないと、見えたら困るものばかりだったのか。勝手な妄想だけど。どんな現象を体験してきたのだろうか。

前に、ホラー漫画家が、奇妙なことが普通に起きるってエッセイ風に書いていて。だよね、そりゃー、と思っていた。子供の頃。


今まさに、甘々を召喚している。

パートナーがいるのだが、長い付き合いで、顔を見ないで話す仲であり、家庭内別居という呼び名をつけられるくらい、お互い干渉しない関係だった。結構な時間、こんな感じの塩対応のし合いだったため、同居人カテゴリーだった。


正直、お誘いする言葉も忘れた。


かと言って、別の異性とのオツキアイを公認してはいない。

パートナーは、哀しいくらい誠実すぎて、生理的にヨソをつくれない。

(そう思っているだけ、というオチもあるのかもしれないが、)相当なオナニストだ。名誉棄損だろうか。


自分に数限りない拒否をくらい、いじけた理性が、折れたプライドが、パートナーを守ろうと自室に閉じ込めた。


ま、仕事はしてるけど。


そんなパートナーは両端がゆるくカーブしているパソコンと電子ピアノと腹筋台と鏡とロードレーサーと乱雑な様相と大量の服と漫画とベッドと無限ペットボトルとゴミと仲良くしている。テレビも買ってたな。この城から抜け出してリビングでご飯を食べ、シャワーとは到底思えない時間、シャワーを浴びると、さくっと城へ戻る。

籠る。

あ~、やれやれ、静かでいいわい、BLが進む~と内心ニタついていた自分であった。


静寂な時間は贈り物とばかりにパートナーの不在を喜び、シェアハウス状態に何の不満もなく、日々ゆたかであった。

が、しかし、今思えばごめん、と思う。

足蹴にしてきた日々が悔やまれるほど、自分は、いま、パートナーに甘えたくて仕方がない。

まさに、自分の書いてきた二次というよか、崩壊したキャラなのだが、その彼がため息を吐いて、想うように。

甘えたい。

ソファーの後ろに回ったときに、座ってテレビを見ているパートナーの背中や肩に触れたい。

出来ることなら、その首に腕を回して、ふざけたりしたい。

が、出来ない。


自分のことが好きなのか、どうか、あまりにも知りたくなって、ドア一枚挟んだ隣の部屋から、聞いてみた。

すると、パートナーは笑った。


「好きじゃなきゃ、一緒にいないから」

「……、最近、聞いてないから、他に誰かいたりして、て」

「いるわけないじゃん。まあ、なんか今さら、恥ずかしいっていうか、照れるし」


そこで、パートナーの隣に行って、イチャイチャすればいいものを恋心が収まらなくって、動けない。

どうしよう、好きすぎる。

うん、これ、わかる。

自分で主人公に言わせてた、やつ。


こんな好みだったっけ。

運転席にいるパートナーを盗み見たり、シートベルト邪魔だな、と思ったりする。

手を繋いで、指を絡めて遊びたい。


こちらの何かしら変わったことが先なのか、同時くらいにパートナーも纏うオーラが変わっている。


休日に、自分をカフェデートに連れ出して、ニコニコしている。自分のウィークポイントをからかってきながらも、楽しそうにしている。お互いが醸し出す空気感に潤いがある、という感じだ。


前はかっさかさ。サバサバ、というと聞こえはいいのか。乾燥地帯に放り出されて、周りサボテン、みたいな雰囲気だった。


それが、お互いを見つめ合って、次の予定を立てたり、とにかく会話を楽しんでいる。頼んだチーズケーキとモンブランをシェアしつつ、ゆっくりコーヒーを飲む。

カフェは天井が高く、小窓に置かれたステンドグラスのシェードランプが美しい。窓から差し込む光に店内は明るく、とても開放的な気分になる。

あぁ、すごいシンクロだ、と頭の隅で思いつつ、目の前のパートナーがカップに口をつけるのを邪な目で見ている。


そして、もどかしいくらい甘え下手になってしまった自分が、なぜか、再び、このパートナーを落とそうとしている。

好きも、面と向かって言えないくせに。

今まで書いてきた、甘々の展開に、目の前の現象が制圧されていく。統制されていく。


数々のセリフが頭の中をめぐる。パートナーの笑顔や柔らかい眼差しに、耐えきれなくなって視線を外してしまう。

何が起こったんだろうか。

何が起きているのだろうか。

別次元に来ているのかとおもうほどに、自分とパートナーの距離感がおかしい。


二次創作の副産物が、自分の現象をまるっきり変えた。


そして、物語とシンクロしている。

甘い毎日を過ごしているあの恋人たちの眼差しが自分のものになる。

甘々な言葉と触れ合いと、激しすぎるスキンシップに、この自分の世界がまるごと飲み込まれている。

新しい日常に困惑しながらも、愛しい気持ちが押し寄せてくる。


一体自分は何を創造したのだろう。

多くの書き手の方々は、今、何を創造しているのだろう。

物語の展開とは別に、自身に新しい展望が見えてくるかもしれない。

多くの読み手の方々は、自分もだが、自身の世界観をぶち壊して、日常をすてても構わないと思うほどの衝撃と天啓を受けるような、そんな出会いがあるかもしれない。


召喚するなら、ヘドが出るほど甘々な、雲の上を散歩するような、ストーリーにしとく。

イージーモードすぎて、逆に敵なしの。


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