第7話 第1回戦

試合当日。


俺の相手は、ドールトンという傀儡(くぐつ)使いだ。


傀儡など敵ではない。

操っている糸を断ち切るなり、からめとるなりすればそれで勝てる。


さて、試合開始だ。


カンカンッ!


ゴングが鳴った。


相手の傀儡は人型、平均的な人間の身長程度の大きさだ。


「傀儡とはまたずいぶんとマイナーな戦法だな、ドールトンとやら。」


「ふんっ、マイナーだからとなめるなよ。

 痛い目を見るぞ?」


「先手必勝!」


傀儡には指先の繊細な操作が必要だ。

素早く先手を打てば、動きについてくることはできまい!


俺は傀儡の糸めがけて斬撃を放った。


しかし、切れない!

斬る直前に糸をたゆませ、糸を切れなくしたのだ。


「ふっ、器用だな!」


「そりゃどうも!」


俺はすぐさま剣に糸を巻き付けた。


「これで糸は絡まった。

 もう何もできまい!」


「ふふっ。絡まったのはどちらかな?」


すると、ドールトンはなんと、糸から手を離した。

傀儡の操作を放棄したのだ!


これでドールトンを斬れる!

そう思ったが、剣に糸が絡まっていて攻撃ができない!


そうしている間に、ドールトンは傀儡のもとへと走った。

そして、傀儡をぱかっと開け、傀儡の中に入ったではないか!


「これが僕の本当の武器、傀儡ロボットさ!

 この傀儡は糸で操作するのではなく、体で操作するんだ!」


俺は糸が絡まったままの剣で傀儡を斬りつけるも、びくともしない。


「ははは、手も足も出まい!」


この傀儡からやつを追い出す必要がある。


そうだ!


俺はその辺に転がっていた石ころを拾い、それを剣で叩いた。


よし、火花が出た。


カキーン!


俺はその火花をもう一度出し、傀儡に燃え広がらせた。


傀儡はあっという間に火だるまになる。


中からドールトンが出てきた。


「げほっげほっ!

 貴様ーーーー!」


ドールトンは急いで水魔法で消火した。


「サモン・ウォータ!!!」


バシャーーー!


あっという間に傀儡の炎は沈下した。


魔法とかズルい!!!


補足しよう。

この世界ではたいていの人間は魔法を使える。

しかし、オロチは生粋の雑魚。

魔法など1つたりとも使えない。


「ふんっ、これで元通りだ。

 僕はまた傀儡に入るだけさ。」


再び傀儡に入れてはいけない!


俺はとっさに、自分が傀儡に入った!


「なっ、だめだ!

 見るなーーーー!」


ドールトンが叫ぶ。


なるほどこれか。


傀儡の中にはなにやら張り紙があった。

そこには、熟女系のえっちな雑誌の袋とじのページが貼ってあったのだ!


「なんだ、これは?

 なぜ傀儡の中にこれが?」


「だめだ、見るな!

 見たな!?」


「ああ、見た。」


「ゼッタイに周りに言いふらすなよ!?

 これは僕だけの趣味なんだ!

 僕はこれがないと落ち着かないんだ!」


ドールトンは続けて言う。


「君にはこの傀儡は動かせないよ。

 僕が君を傀儡ごと火だるまにする。

 これで僕の勝ちだ。」


傀儡は俺には動かせないのか、これはまずい。


しかし、まだチャンスはあるかもしれない。


「俺、お前の趣味、言いふらしちゃおっかなあー?」


「なっ!そんなことしたら燃やすぞ!」


「逆だよ。立場を分かっていないようだね。

 俺は燃やされようが燃やされまいが、降参して、そのあとに言いふらすことができる。

 つまり、君は俺の言うことを聞くしかないんだ。

 言いふらされたくなかったら、降参しろ、とね。」


そう、ドールトンはすでに選択肢を失っているのだ。


「くそっ! どうしようもない・・・。

 わかった、降参だ!」


「おーーーーっと、ドールトン、突如降参宣言だー!

 ということで、勝者、オロチーーーー!!!」


「ひゅーーーーひゅーーーーー!!!」


こうして、俺は熱い頭脳戦を制したのだった。


---


試合後。


「オロチさん、相手を攻撃してないのに勝った!

 なんで? わんっ!」


「ああ、頭脳戦というやつさ。

 たくみな話術で相手を混乱させてやったまでのこと。」


「さすがはオロチさん、私の想像をいつも超えますわん!」


「ええ、今回のオロチさんはオロチ斬りを使わずに勝ちました。

 これはある意味快挙ですわね!

 今日はお赤飯を炊きましょう!」


「ああ、そうしてくれ。

 俺は今日は疲れた。

 勝利のお祝いとねぎらいも込めて、今日のご奉仕は眺めに頼む。」


「まったく、オロチときたら試合終わりも元気なんだから!

 えっちに関しちゃ、疲れ知らずだな!

 あっはっはっは!」


こうして、俺たちは夜の2回戦目を実施したのであった・・・。

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ヘタレな俺だが、最強嫁ヒロインたちが強すぎて無双しちゃう 無限労働地獄 @mugenroudou

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