第32話
……ステータスの攻撃に補正をかけてくれるこのブーツも欲しいよな。
グローブ装備と合わせることで蹴りのコンボを生み出せるしな。
拳と蹴りで戦うのなら、この二つは揃えたい。後は、スピードを殺さないようにアクセサリー系の装備品だな。
この店で、もっともレベルアップ時の成長補正が高いのはハードミサンガか。
それらを合わせた合計金額は……二十万円か。
……金が足りん。
靴と腕輪までは……さすがに諦めるか。
俺がしばらく装備を見て回っていると、霧崎が首を傾げてきた。
「どうしたの?」
「いや……装備は三つまで効果があるだろ?」
「うん」
「だから三つ買いたかったんだけど、手持ちがないからな。どうしようかと迷ってな」
「それなら私が買ってあげる」
「……え? マジで? ……いや、さすがに悪いからいいよ」
思いがけない提案でこれが本当にただのゲームならば喜んでお願いしていただろう。
ただ、さすがにお互い生身の人間なわけで、お金のお世話になるのは避けたかった。
「でも、私は全力の滝川と戦いたい」
霧崎の言葉に俺は少し考える。
……俺としても、無駄なく成長したい気持ちがある。
今選んだものを装備してレベルを上げ続ければ、間違いなくかなりの強キャラになれる。
モブとはいえ、強キャラになってはいけないという理由はないだろう。その力を表舞台で発揮しない分には、いくらでも鍛えていいはずだ。
しばし悩んだが……俺は霧崎に一つ条件を提示する。
「ひとまず、借りるってことでいいか? 俺が稼いだら、その金額を払うってことで」
「別に私はどっちでもいい」
俺としても、金の貸し借りになるのできちんとしておきたい。
そうは思いつつも、強キャラにはなりたいのでこの提案はありがたく受けよう。
「……それなら、買ってもらってもいいか?」
「分かった」
俺は持っていたお金を霧崎に預け、足りない分を霧崎が出してくれた。
「はい。楽しみにしてる」
「ああ。……任せてくれ」
「それじゃあ、早速ダンジョンに向かう」
霧崎が楽しみな様子で俺の手を引っ張っていった。
装備を整えた俺たちは、静穂ダンジョンへ向かっていく。
霧崎のテンションは過去一番だ。
ダンジョンでの戦闘が楽しみで仕方がない様子で、今にも飛び出しそうな勢いだ。
彼女のその姿は、まるで子犬が遊び相手を見つけた時のように元気で活発だ。
しばらく歩いていくと、静穂ダンジョンの入り口が見えてきた。
周囲は相変わらずのどかな田舎風景だが、ダンジョンの入り口付近だけは異様な雰囲気が漂っている。
石造りの古い扉がある。
……あれが、静穂ダンジョンだな。ダンジョンの入り口はどこも石造りの古い扉のようになっている。
ゲームでは資料程度しか出ていなかったものだが、静穂ダンジョンのものも同じ造りになっているようで安心だ。
このダンジョンは、ガブリエルユニオンによって管理されている。
ガブリエルユニオンは天使の中でも特に封印術に優れており、虚影を封じ込める結界を作り出すことで街を守っているユニオンだ。
天魔都市以外の地方都市が無事なのは、ガブリエルユニオンがダンジョンを造り、そこに虚影たちを封じ込めているからだ。
封印が正しく機能している間は街に虚影は出てこないが問題もいくつかある。
中に封印された虚影は同じ虚影を襲い、成長する個体もいる。
ダンジョンに封印するというのも、決していいことばかりではないんだよな。
「早く早く。中に入って戦いたい」
霧崎は戦闘の準備が整ったのか、すでに門の前で戦闘態勢を取っている。
俺はその姿を見て、苦笑いしながらも自分のグローブをはめ、ブーツも履き替える。
少し、緊張するな。
以前、虚獣と戦った時は絶体絶命の状況だったので深くは考えなかったので、これが俺的には初めての戦闘だ。
霧崎は慣れた様子で門へと手を触れると、その体が消える。
……俺も同じように門へと手を触れ、霧崎の後を追うようにダンジョンへと入っていった。
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