第13話 未来の輝きに魅せられて ②



『ニオイ、ニオイ、ニオイ、ニオイ・・・!』

なんにも楽しくなかった。


〜私だって昔は・・・。


そう考えただけで、手を洗いたくなっていた。

流水で洗うことで、手の汚れがきれいになっていくように思えた。

まだ学校に着いたばかりだったが、早くお風呂に入って全身を綺麗に洗いたかった。

早くこの制服を着替えて、洗濯をしてしまいたかった。


昔は楽しかった・・・。

友人も多く、みんなでいろんな遊びをしていた。

でも、あの日の遠足の旅行中に私はバスに酔って吐いた。

狭いバスの中で叫び声が上がった。


「キッタネ〜!、クッセ〜!!」

吐き気が続いてる私の周りで、いろいろな声が上がった。

しぶしぶ床を拭く先生のタオルを持つ手は、本当に汚いものを無理矢理掃除しなくてはいけない時と同じだった

タオルの端をつまんで、汚れを撫でるだけ。

時間がかかるだけで全くふき取れないやり方であった。

私の吐き出した汚れは、薄く伸ばされた面積に合わるように、さらに酷い悪臭を放っていった。

あの時間の全てが、私への悪口に満ち溢れた。

そして、天を突く程の悪意が、私の心を壊した。


『ワタシハ、クサク、キタナイ、ビョウキノバイキン・・・。』


楽しげに笑いあうあの一団へは、もう戻ることができない

私が近づいただけで、あの笑顔は見る影もなく霧散してしまうはずだ。

彼が羨ましかった。

まだ小さく、皆と遊んでいたあの頃に戻りたかった。




僕は、学校帰りに薬局でシャンプーを買った。

イチゴの香りで◯◯さんをぐらつかせる作戦であったが、見事に裏目に出た。

ただ、この香りのおかげで、◯◯さんとは仲良くなれたような気がしている。

◯◯さんには、もっとときめく香りの魔法で、攻めて来てほしいと笑われてしまった。

ダンディーなシャンプーを手に持ってみたが、加齢臭用と書いてある。


『これではない。』

次々に物色して確認をしていくが、男性用はイコール加齢臭なのかもしれない。


だんだん面倒くさくなって、誰も使っていないようなレアそうなものを選んだ。


「うん。漢字の渋いネーミングだ。」

意外に高いシャンプーを僕は生まれて初めて購入した。

お小遣いは無くなってしまったが、足取りは軽い。

まだ放課後になったばかりだというのに、明日の朝が楽しみでならない。

夜も使ってみたいが、高かったので朝だけ使うことにしよう。

今日も自ら進んで、勉強をしている

テレビゲームも勿論やっているが、テレビゲーム一直線だった自分に、どことなく広がりが出てきたように思える。

とにかく今は、何にでも興味が湧いてくるのだ。


眠る前には僕以外の同級生達も、これほどまでに高ぶっているのであろうか。

恥ずかしくて友人と性について話をすることはないが、多分みんなもまた僕と同じ経験をしているのであろう。

口臭予防をきっちりとしてから布団に潜り込んだ。


『明日の朝は朝シャンをして・・・〜。」

朝の行動を整理しているうちに、深い眠りが僕を包んでいった。



〜〜〜〜





つづく

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