第12話 未来の輝きに魅せられて ①

「えっ!・・・またなの?」


微妙に時間を変えて洗っているのだが、妹は必ずその現場に現れる

眉間にしわを寄せて、あからさまに軽蔑しているのがわかる。


「今日は臭くないみたいだけど、お風呂に入ったほうがいいんじゃないの?汚いお兄ちゃん。」

言動とともに、その思いが表情にも現れていた。


「お母〜さん!お兄ちゃんがまたパンツ洗ってるよ〜!」

「なんかおかしいんじゃないの?」

リビングのドアを開けながら、大きな声で妹が母親に報告する。

そんな妹に母親が声をかける。


「お兄ちゃんは、モテないんだからしょうがないのよ。」

「え〜っ!そんなの関係ないじゃん!」

母親の言い方も言い方だが、妹が学校で何も勉強していないことが手に取るように分かる。

妹の言葉と、もしかしたら〇〇さんと付き合えるかもしれないという予感から、急いでシャワーを浴びる。


香りの良い妹のシャンプーを使ってみる。

イチゴの甘い香りが浴室に広がっていく。

さっぱりしてリビングに入ると、いきなり妹が突っかかってくる。

「ちょっと、お兄ちゃん!モテないからって私のシャンプーを使わないでくれる!」

「明日はパンツを洗わないといいね〜。」

「モテない、お・に・い・ちゃん。」

小馬鹿にするように妹が鼻で笑う。

母が何を教えたのかは分からないが、妹の中でモテない事がパンツを洗うことだと理解できたようであった。


「〇〇やめなさい!」

「学校でも、お兄ちゃんのこと言っちゃダメよ!」

母が妹を止めてくれた。


「大丈夫よ。お父さんもモテなかったから・・・」

「お小遣いはあるの?」

心配をしてくれる母の目には、哀れで情けない息子を気遣う切ない親心をありありと感じることができた。


今日も、いたたまれずにすぐに家を出た。

隣の〇〇さんはまだ登校していなかったが、前に座っている〇〇さんは、今日も薄手のブラウスにスポーツブラをのぞかせながら、大人びたシャンプーの香りを漂わせていた。


「〇〇さんおはよう。」

後ろから声をかけると、彼女は待っていたかのように、なんだか嬉しそうに振り返った。

くりっとしたイタズラっぽい瞳が、期待を込めた小動物のように僕を見つめていた。

キラキラと光るふんわりとしたリボンが、顔にかかる可愛らしい触覚の上で揺れていた。


「〇〇くん、おはよう。」

「これどうかな?」

見て見て、と言わんばかりのアピールだった。

きっと自分でも素敵だと思ったものを、見せたくて仕方がないのだろう。


そのリボンは可憐な少女の髪の上で、ふわりとした乙女の神秘性をさらに上振れさせていた。


「揺れるんだよ、これ。」

彼女が頭を振ると、そのリボンは髪の上で踊り、少女の髪の香りが僕の鼻腔を襲った。

僕は顔を赤く染めて、混乱する頭を整理する。

僕は、彼女のおしゃまな行動力に、ときめきを隠すことができない。

僕はすっかり〇〇さんの笑顔と、溢れるその笑顔から目が離せなくなっていた。


「う、・うん。すごく可愛くてとても似合っているよ。」

少し恥ずかしかったが、〇〇さんを見つめながら答えた自分の本心になぜだか興奮してくる。

その興奮に少女の姿と大人の香りが重なり、リュックで隠している股間が、痛いほどにズボンを押し上げてきていた。


「僕は何があっても、目の中に入れてでも、絶対に君を守るよ。」

興奮がアドレナリンを呼び、言わなくてもいいことまで彼女の瞳を見つめて答えていた。


「えっ!あぁ・・・、ありがとう。」

あまりに正直な僕の感想に、恥ずかしそうにうつむいた彼女だが、言われて悪い気がしなかったのか、顔を赤らめてチラチラと僕を見て恥ずかしそうにはにかんでいた。


「よう〇〇、おはよう。」

気まずさを打ち払ってくれるように、〇〇さんが声をかけてくれた。

「今日は朝シャンしたんだな。爽やかな香りがするじゃんかよ。」

「もしかして、本気で私のこと狙ってるのかなぁ?」

僕をからかってから、ちょっと悪そうな三人と話をしながら廊下に出て行こうとしていた。


「オ・ト・コ・ノ・娘ですね。」

「イチゴの香りはちょっとヤバいっすね。」

「オトコの娘でも、あいつ今日もしっかりとちんこを立てたみたいですね。」

「あいつまた、授業中にチンコを摘みますよ。」

「ギャハハハハ〜 www〜」

毒を吐かなくなった◯◯さんであったが、毒を吐く人間が三人に増えただけであった。



「私も、イチゴのにしようかな〜。」

「◯◯君と同じの♡」

ニッコリと上目遣いの◯◯さんの言葉に、僕は怒りも忘れて力強くリュックを股間に押し付けていた。



つづく

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