第4話 僕も同じだよ①

「お兄ちゃん、何やってんの?」

「顔を洗いたいんだけどぉ!」

隠れてこっそり洗っていたはずの夢の処理を、1歳違いの妹にあっさりと見つかってしまった。


「あぁ・・・、うんタオルをね・・・。」

なんとなくごまかしたつもりであったが、妹の視線はそれがタオルでないことを的確に見抜いていた。

しかし、それ以上は分からなかったようで何も言わずに、「ふ〜ん。」と言ったきりでリビングに消えていった。


危ない所だった。

あんなおしゃべりにバレたりしたら、大変な事になるところであった。

母親にもバレないように洗ったパンツを、洗濯物の一番下に紛れ込ませた。


朝日が目に染みるほどに眩しく、昨夜の夢での活躍を陽光が祝福してくれているようであった。

今日はどんな顔をして隣の席に座る〇〇さんに会えばよいのだろうか。

苺のようにぷっくりとそこだけが膨らんだ、青春の蕾が僕の中で鮮明に蘇っていく。

同時に僕の生え始めたばかりの淡い新芽も、ズボンの中で大きく膨らみ芽吹いていく。

今日は窓の外を見るふりをしながら、〇〇さんの横顔を覗き見るのではなく、声をかけて正面から彼女を見つめようと決意していた。


『いた!』

いつもより早く到着した教室で、僕は自分の席の隣に座る女の子を素早く見つけた。


「おっ、お、お、おっはよう。」

精一杯の挨拶は、どもった上に声も上振れしていた。

彼女は意外そうに僕を見つめながら嬉しそうに笑う。

「おはよう〇〇君。」

くらくらしそうな程に眩しい笑顔だった。

「いっっ、い・い天気だね。」

先ほどと同じように声はどもって上振れしていたが、僕は初心を忘れないように、立ったまま彼女を正面から見つめながら話を続けた。

リュックで隠した僕の股間は、夢の続きを見ているかのように、痛いほどに彼女に向かってその芽を伸ばしていた。

彼女の柔らかな表情と、こんなにも笑顔を見せてくれたのは、新学期からずっと隣に座っていたが初めてのような気がした。

彼女の隣の自席についた僕は、いつもより少しだけ椅子を彼女に近づけて座った。

そんな僕の行動に気がついたのか、彼女はあっさりと席を立って友人に話しかけていた。

僕はなんとなく椅子を戻して黒板を見つめた。


そんな僕の様子に気がついている人物がいた。

いつもは女の子に話しかけるはずのない男が、どもりながらも果敢に話しかけているのだから、かなりの違和感があったのだろう。

その女の子は、机の上の本を読みながら、じっと耳を済ませて僕と〇〇さんの会話を聞いていた。

そして、二人にチラリと視線を投げかけた後で、再び本に視線を戻して何かをボソリと呟いていた。


「リア充めっ・・・!」

それは彼女自身にしか聞こえないほどに小さく、まだ朝にもかかわらず底しれぬ憎しみがこもっているような声であった。


授業中は、隣の〇〇さんも僕を避けることはできない。

ゆっくりと少しづつ椅子の距離を狭めていくが、彼女もゆっくりと同じ距離だけ僕から離れていく。

やはり、夢は夢でしか無いようであった。


昼食時に彼女のグループの女の子たちが、僕をチラチラと見ながらゲラゲラと笑っていた。

〇〇さんはすまなそうに僕を見ているが、僕は正面から彼女を見つめて微笑んで見せた。

女の子たちの笑い声が大きくなり、「気持ち悪ぅ〜」という声さえも混じっていた。


『好きだ。』

まだ言葉にする勇気は無いが、この気持ちを正面から彼女にぶつけていく。

なんと言われようが、正面から彼女に接することを、今日決めたのだ。


慌ただしい一日が終わり家路を急ぐ。

きっと今日も、夢の中での大冒険が待っている、そんな期待が渦巻いていた。

安らかな眠りを手にするためにも、家に帰って早く宿題を終わらせたかった。



僕は、全く分からない宿題の途中で見始めたエロ写真のスクラップを本棚に戻した。

このまま見続ければ、猿のように思うがままに握りしめてしまうと思った。


『他の世界で放つことは許さない・・・、永劫の苦しみを・・・。』

女神の言葉が僕の欲望にストップを掛けた。

「うん、早く寝よう。」



つづく


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初めての中編に挑戦です。破綻してても許してね。


☆私は褒められて伸びるタイプ♡ 〜低評価は徹底的に塩対応!〜

☆素敵なコメントといいね!待ってます。


中学生男子は、学校に行く前に必ず読んでくれよ!

友達への宣伝もお忘れなく♡

                           rabao

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