第4話アーサー

✳︎✳︎✳︎


「アーサー、やっと国に帰れるな。愛しい奥さんが待ってるんだろう?」


「奥さん?」


「ほら、リディアだよ。フレデリックが言っていたぞ。婚姻届がどうのって。卒業してすぐに駆り出されたから、お前結婚式もしてないだろう」


「あぁ、婚姻届ね」


「まぁ、とにかく、元気でがんばれ!」


「ありがと」


アーサーはこの7年間共に過ごした仲間と抱き合い、別れの挨拶を交わす。




一時は捕虜として捕縛され孤島に送られていたが、すぐに解放された。



解放されたものの、その後もトラブルに巻き込まれたり、助けてくれた村の荒れた地を開墾したり、なんやかんやと各地を転々とするはめになった。



そうして、先日やっと自国軍に保護されたのだ。



これでやっと、帰れる。


フレディとリディアはどうしているだろうか?



こんなことになるのなら、あの時すぐに返せば良かった。



アーサーは、服の裏の隠しポケットを手で触れる。

縫い付けてある袋の無事を確認して、安堵のため息をもらす。


これだけは、どんなことがあっても死守してきた。厳重に保護している。



リディア、やっと君にこの婚姻届が返せるよ。


あの日、フレディから頼まれたんだ。



リディアに告白したいから、誰も来ないように見張っていてほしいと。


卒業式の帰りに、図書室へ来る物好きなんていないのに。


フレディとリディアくらいだろ。



緊張して洗面所に行きたくなったと言うから、フレディが戻るまで仕方なく代わりに座ってたんだ。


ちょっと眠かったし。



まさかそのタイミングで、君が来るなんてね。


リディアが好きなのはフレディだよね?



僕でさえ気づいたのに、フレディは納得しないし。


まぁ、いきなり婚姻届の告白の現場を目撃したら、勘違いするよね。


とにかく告白しろ!と、けしかけたけど、どうなったかな


思わせぶりなメモを、フレディの前で書いて預けたけど。


まぁ、直接会って話せばいいか。


あそこに見えてきた2人に。


2人とも思い詰めた表情のように暗いけど。


「ただいま! フレディ!リディア!

あー、なんか僕帰って来てまずかった?」





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この結婚は間違いじゃない 涙乃(るの) @runo-m-runo

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