第4話アーサー
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「アーサー、やっと国に帰れるな。愛しい奥さんが待ってるんだろう?」
「奥さん?」
「ほら、リディアだよ。フレデリックが言っていたぞ。婚姻届がどうのって。卒業してすぐに駆り出されたから、お前結婚式もしてないだろう」
「あぁ、婚姻届ね」
「まぁ、とにかく、元気でがんばれ!」
「ありがと」
アーサーはこの7年間共に過ごした仲間と抱き合い、別れの挨拶を交わす。
一時は捕虜として捕縛され孤島に送られていたが、すぐに解放された。
解放されたものの、その後もトラブルに巻き込まれたり、助けてくれた村の荒れた地を開墾したり、なんやかんやと各地を転々とするはめになった。
そうして、先日やっと自国軍に保護されたのだ。
これでやっと、帰れる。
フレディとリディアはどうしているだろうか?
こんなことになるのなら、あの時すぐに返せば良かった。
アーサーは、服の裏の隠しポケットを手で触れる。
縫い付けてある袋の無事を確認して、安堵のため息をもらす。
これだけは、どんなことがあっても死守してきた。厳重に保護している。
リディア、やっと君にこの婚姻届が返せるよ。
あの日、フレディから頼まれたんだ。
リディアに告白したいから、誰も来ないように見張っていてほしいと。
卒業式の帰りに、図書室へ来る物好きなんていないのに。
フレディとリディアくらいだろ。
緊張して洗面所に行きたくなったと言うから、フレディが戻るまで仕方なく代わりに座ってたんだ。
ちょっと眠かったし。
まさかそのタイミングで、君が来るなんてね。
リディアが好きなのはフレディだよね?
僕でさえ気づいたのに、フレディは納得しないし。
まぁ、いきなり婚姻届の告白の現場を目撃したら、勘違いするよね。
とにかく告白しろ!と、けしかけたけど、どうなったかな
思わせぶりなメモを、フレディの前で書いて預けたけど。
まぁ、直接会って話せばいいか。
あそこに見えてきた2人に。
2人とも思い詰めた表情のように暗いけど。
「ただいま! フレディ!リディア!
あー、なんか僕帰って来てまずかった?」
この結婚は間違いじゃない 涙乃(るの) @runo-m-runo
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