15.Preparing to Leave

都庁の前では着々と火星移住の準備が進んでいた。既に東京にしかいない生存者の多くは少しでも自分の助かる可能性を選んだのだった。

「それ答えになってないじゃないかよ笑」

俺は美咲にそう突っ込む。

「その通り、笑」

美咲は照れくさそうな顔をして笑った。

「俺はさ、なんとなくここに残りたいんだ。別に特別な理由はない。だから火星に行くってなってもそれが嫌だって言いたいわけじゃないんだ。」

 少し真面目な雰囲気でそう言うと美咲も口を開いた。

「私もほんとはここから離れたくない。私の家族も親友も全て失ってしまったこの地球から。どうせ、火星に行ったって何もできない。知らない人ばかりの環境でわざわざ生きている意味があるのかなって思っちゃうし。」

「それって俺が残りたいって言ったからそう言ったんじゃないよな?」

「何言ってるの!そんなわけないでしょ!」

「そっかそっか、ごめん笑」

 俺は美咲に意見を否定されるのが怖くて、はっきりとしたことを言えなかった。でも美咲がもし本当に俺と同じ意思を持っているのなら、これはこの上ない幸せなのではないだろうか。

「じゃあ本当にここから離れない方針でいいの?」

「うん、いいよ。」

「ここにいたらいずれウイルスに感染しちゃうんだよ?」

「もうなんでそんな迷わせること言うのー。私はそれでもいいの!」

「いや、やっぱり美咲がどう思ってるか気になってさ」

「安心して大丈夫だよ」

「ありがとう」

 俺と美咲はきっと最初で最後になるだろう大きな決断をした。それはほんとに大きくて大きくて、それだけで押しつぶされてしまいそうだった。だけど美咲と一緒なら大丈夫。そう思えたから俺はよかった。

「美咲。一応、都庁の様子見に行かない?」

「そうだね、今が何が起きてるのか確認しなきゃ」

 こうして2人で都庁へ向かった。

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