7.Strategy
ついていくことに蒼は、やめとけ
と何度も言ってきたが私は自分の決断を曲げる気はなかった。
蒼の車に乗り込み、蒼の運転するがままに進んでいった。車窓から覗いた。
こんな荒れ果てた世界……。
というほどの荒れ具合は実際にはない、
世界がテロに襲われたわけでもないし、各地で爆発が起きたわけでもない。ウイルスという目に見えない形で世界は荒れ果てているのだ。
本当に人通りがゼロだった。こんな中に生存者がいるとはとても思えない。
蒼には明確な目的地があるのだろうか、助手席から横顔を見ながら思った。
あの時、蒼は殺すと言った。つまり、このまま蒼についていくということは、残酷な何かに出会うということなのだ。それも承知している。
それからどれだけの時間が経ったのか、揺れる車内で眠りについていた私は起きてすぐは
未知の地にいるようだった。
「ねえ、ここ……」
私が場所の名称を口に出せなかったのは、あまりに殺しにいくという場所としてはふさわしくなかったからだ。
そんなことあっていいのか……
蒼が私を連れて訪れたのは、、郊外の墓地だった。
なんで、こんなとこ来てるの?そう聞きたかった。でも、そんな余裕はなかった。
「美咲、死にたいか、死にたくないか。」
「えっ?」
蒼の言っていることが最初わからなかった。
その質問の真意を考えたが……
「どっちだ。」
せかしてくる蒼に遮られた。
何? 蒼は何が言いたいの?そんな短い質問でかっこつけても、相手が理解できてないんだから意味ないんだよ?
「なんで、いつも抽象的なことしか言わないの……」
率直に思っていたことを独り言のように、でもはっきり聞こえるように口に出した。
「ねえ、ちゃんと言ってよ……」
ちょっとした期待を込めたつもりだった。
「早く答えろ。」
通用しなかった。
「自分がどっちがいいのか、それだけだ。」
「やめてよ……」
「いいから、選んで!!」
「そんなの、死にたくないに決まってるじゃん……」
これが最適解のはずだ。これが蒼を普通に戻す回答に違いない。
「そうか……じゃあな…………」
「えっ、……」
蒼はそれだけ言って車から出ていった。
私にはなぜか、その背中を追うことはできなかった。確かに私は死にたくない。
けど、それは生存者全員が持つ希望じゃないの?蒼は生きていたくないの?
なんで、そんな自分の命を軽く見てるの?
だんだん小さくなっていく蒼の背中を見て、1人呟く。
置いていかないで……
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