5.Uncertain Tomorrow
へー、俺についてきちゃうんだー。
いかにも、不審者らしき発言に私は一瞬引いたが、この男と一緒じゃなければいつ死ぬかわからないと思うと仕方なく思われた。
男は不恰好なエスコートで、私に食べさせてくれたり、宿泊場所を予約してくれたりと、
ショックの強い1日目としてはありがたい配慮だった。いつしか、私はそんな男にため口を使うほど打ち解けていた。
「ねー、行かなきゃいけないところって何なの?」
「まぁ勝手に俺が感じてる義務感をみたすための場所かな。」
「何よ、それ。具体を聞いてるの。」
「美咲にはまだ早いんだ。」
「年齢あんまり変わんないじゃん。」
「そうだけどさ。」
これ以上深くしないで欲しい様子だったので、別の話題を切り出す。
「そういえば、あなたの名前は?」
「言ってなかったか。佐々木蒼だ。」
その名前を聞いた瞬間、歯切れの悪いような、けど無邪気でいたずらを楽しんでいる子どものような、そんな葵の顔が浮かび上がった。
「アオイ……」
「ん、どうした……?」
「死んじゃったのかな……」
「え、どうして……あ、そうか。友人にいるんだな、同じ名前が。」
「うん。」
「そっかぁ、辛いなそれは。」
分からないながら精一杯、同情しようとしてくれた蒼の心の広さを感じた。
だけど、昼間からずっとLINEをしているのにやはり葵からの返事はない。いつも、既読が音速でつくあの葵からの返事がないんだ。
行方は容易に想像できた。
たとえ、蒼に慰めてもらったとしても私の中の葵が蘇るわけじゃない。
結局はそういうことだ。
今日は寝ろ。見かねた蒼がそう言った。
まだ9時だから、と断っても引き下がらなかったので渋々布団に入った。
確定した明日が来る保障もないまま…
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