story②第一話
黒いドレスに身を包み目元には特殊な眼鏡をかけた女性が部屋に佇んでいた。
腰まである黒髪はゆるやかにウェーブがかかっており、透き通るような肌、華奢な体つきは庇護欲を誘う。
目元は…その瞳を見たものはいないが、潤んだ紫の瞳はその奥に吸い込まれそうなほど幻想的だった。
彼女の容姿に惹かれる者は多い。だがその力により、忌み嫌われていた。
彼女はいつも特殊な眼鏡をかけていた。眼鏡をかけていても彼女の魔力は巨大なので、その目を見たものは意識を失う。
その為彼女は隔離生活を余儀なくされていた。
彼女の名は サラ・タラントン
別名 呪われた魔女メデューサ
彼女の瞳を見たものは魂を吸い取られるのか石のように動かなくなる。
そう、その力のせいでメデューサとあだ名をつけられていた。
室内をゆっくりと彷徨う。
ここはあなたの部屋。
最後の場所にここを選んだのは、あなたに1番に見つけてほしいから。
ポケットに小さな小瓶が入っているのを確認する。取り出した小瓶には液体が入っている。終わるのは簡単。そう、コレを飲むだけ…
苦しいかしら。
もがくかしら。
暴れて叫ぶかしら。
いいえ、きっと一瞬のことね。
猛毒と言っていたから。
最後にもう一度抱きしめてほしかった。
不可抗力とはいえ、あなたに抱きしめられた温もりを思い出に、さよなら…アベル
これで、あなたは私から解放されるわね。
少しは気にかけてくれるかしら。
私は小瓶の中身を一気に飲み干した。
***
この国では魔法を扱える者が多い。
火魔法に特化した者、水魔法、氷魔法などそれぞれに特化した能力を持つ。
成長と共に魔力量も増えていくので、制御出来ずに暴走することが多々ある。暴走すると周囲を巻き込むことになり、怪我人が絶えない。
主に制御できなくなるのは女性が多く、子供を産むと落ち着くとされていた。子供に能力を分散させることで魔力量が減ることが安定させるのによいようだ。
その為、魔力の強い令嬢は遅くとも20までに結婚を義務付けられていた。
サラは適齢期の18歳になっていた。
サラの力は恐れられていたので、早めに結婚させようと王命がくだったのだ。
子供は親の能力を継ぐとは限らない。
サラの相手に選ばれたのは、アベルだった。眼鏡をしているとはいえ、サラの瞳を見ることは死を意味する。
結果、目に傷を負った者達の中から選ばれることになったのだ。
アベルは勇敢な騎士だった。先の戦争で、片目を負傷をし、目が不自由になっていた。一線を退き、街である施設の警備の仕事をしていた。
サラのように危険な能力を持った者たちが暮らしている施設の警備だ。
そう、サラはアベルとは知り合いだった。
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