第46話 マジクラウォー2回戦①

 各期生対抗マジクラウォー第一回戦、決着。

 結論から言えば2期生の……いや、幽姫ツララの一人勝ちだった。

 全員残基1とはいえ4期生はフルメンバーだったのにも関わらず。

 

 ツララが取った行動、それは単なる正面突破だった。

 ずっと張り付いていたダークは無視し、射線を切りながらシューコとセンカの二人に接近。

 真正面から撃ち合ってシューコを撃破した後センカと相打ち、残基のあるツララだけがリスポーン。

 残る2人は戦闘力ほぼ皆無のダークとツムリ、一瞬のうちに鏖殺される結果となった。


「えー……はい。まあ凄かったんですけど……なんかウチのツララさんがごめんなさいなのです」

「ツララ、すごい。チート?」

「疑いたくなるかもですけど一応実力なのです」


《結局ツラたん無双ww》

《ワンチャンあるかと思ったけどやっぱ別格か……》

《けど残基1削れたのは凄かった! ……センカちゃんとシューコさんの二人がかりでやっとかぁ》


「2期生と4期生のみなさんお疲れ様でしたー。では続いて2戦目、1期生と3期生の対戦始めていきましょう!」

「うん……けほっ、んんっ」

「大丈夫ですか? キツかったらお水飲んでくださいね?」

「ありがと。あ、次のチーム、意気込みというか、宣戦布告したい相手、いるらしい」

「そうなのですか? では皆さんご自由にどうぞー」


 司会の案内に従うように、2チームの立ち絵が画面に現れる。


「アルマちゃん! 今日は負けないよー☆」

「絶対勝つ」

「まだ勝ちを譲るには早いかなー。どんなゲームもこの導化師アルマにお任せあれってね♪」


 正々堂々勝負を挑む麻豆ジュビアと鳴主サタニャの二人。

 その気持ちに応える導化師アルマ。


「カチュアさん。本当に遠慮いらんのやね?」

「ああ今日は無礼講だ。先輩らしく胸を貸してやろうじゃないか」

「おおきにー。そのちっちゃなお胸じゃ借りるのも難しいけどなー」

「ほう。その程度の挑発に乗るカチュアだと思ったか? てめぇまな板になるまで擦り潰してやるからな!!」


 煽りながら啖呵を切る初為ウラノ。

 挑発に乗り切れ散らかすカチュア・ロマノフ。


「さてこの状況、どうしますかなサイコ氏ロカ氏? 真繰も因縁のライバルっぽく演出した方が良いですかな?」

「それを口に出している時点でやる気はないのデハ? かくいう科楽もネプに同感デス」

「ですなぁ。ではエンジョイ勢らしく全力で遊び倒しましょうぞ!」

「思い切り賑やかしてやりマショウ!」

「貴女達らしいですわね……おかげさまでワタクシはいつも通り調整役ですわ」


 周囲との熱意の差を気にすることなく自らのスタイルを貫く真繰ネプ、科楽サイコ、ロカ・セレブレイトの3名。 

 それぞれやる気は十分だった。

 そして準備を進めて数刻、試合は開始する。


「第2試合、ゲームスタート、です」


 魔霧ティアの号令と共にブザーが鳴り響く。

 試合の運びは序盤から第1試合と異なるモノとなった。


「やはり、3期生は今年もその戦闘スタイルですのね」


 1期生の面々は敵を視認するも近づけない。

 なぜなら3期生は他チームと異なり4人全員で行動していたから。

 陣形は回復の杖を持つウラノを3人が囲む形。

 対して最初に突撃を始めたのはカチュアだった。


「何故守る! カチュアはそこの牛女に用があるのだが!?」

「ごめんなぁカチュアさん。ウチに会いたかったらこの3人倒してからにしてなー」

「ヒーラー守るのは当然だよねー☆」

「ジューさんそこ邪魔。ちょっと引っ込んでて」

「こらこらサタニャ氏。こんなときまで喧嘩腰はやめて欲しいのですぞ」


 テンション高めに言葉を投げつつ、遠距離射撃を試みる。

 その魔法攻撃の色に合わせ、近い色の防具を持つサタニャが前に出て攻撃を受ける。

 三者異なるの属性防具でダメージ軽減を図り、守られるヒーラーが即時回復する作戦だった。


「相変わらず見事なチーム連携デスね」


 チームプレイを得意とする3期生、対する1期生は完全なる個人プレイだった。

 回復の杖を持つロカは全体を見渡せる場所の付近で隠れ、カチュアとサイコはそれぞれのタイミングで攻撃を仕掛ける。

 そこに意思疎通はなく1歩間違えば事故にも繋がるプレイ。

 しかし奇跡的に噛み合うことがあれば、敵も予想つかない襲撃に見舞われることになる。

 そして、その奇跡を起こすのが導化師アルマの役目だった。


「じゃあこっちも連携しよっか。と言っても、アタシが勝手に合わせるだけなんだけどね♪」


 カチュアとサイコの攻撃タイミングが合い大きなダメージを受けた真繰ネプ。

 ウラノが回復魔法を発動させる寸前、その瞬間に高速の攻撃が飛来した。


「ちょ、嘘やん? このタイミングに黒魔法撃って来れるん!?」

「ぐえー死んだンゴー」


 チャージ時間が長い代わりに速度と威力に優れた黒魔法、2回戦最初のキルはアルマの手に渡った。

 回復も一瞬間に合わず一人脱落し、3期生の陣形は早くも穴が空いた。


「一人減った! 今が好機だな!」

「残念やなぁ。ちっと早い気ぃするけど、陣形崩れたら即退散って決めてたんよ。ほなさいならー」

「逃がすわけがないだろう!!」


 逃走劇を開始する二人。

 それを眺める二人は相談する。


「一人で行ってしまいましたネ。どうしマスかアルマ?」

「いやー今のカチュたんだと絶対返り討ちでしょ。サイさんお守りお願いしていーい?」

「合点! 最悪でもカチュアとウラノの一々交換にしてきマス。科楽の勝利に犠牲は付きものデース」


 初為ウラノを追うカチュア・ロマノフに続き、それを追走する科楽サイコ。

 リスポーン待ちの真繰ネプと後方に控えるロカ・セレブレイト。

 それらを除けば残されたのは導化師アルマ1人に対し鳴主サタニャと麻豆ジュビアの二人。


「流石のアルさんでも2対1は無理」

「ちょっとちょっとー。こっちにはスーパーヒーラーロカちんがいるの忘れてないかね?」

「ワタクシのゴミエイムを覚えてるからこそ数に入れてないんですわよ。過度な期待はしないでくださいませ?」

「その通りだけど誇らしげに言うことじゃないね☆」


 そんな攻防を繰り広げる1期生vs3期生。

 それを見る司会者は視聴者に向け実況していた。


「さあ開始早々激戦が繰り広げられているのです! アルさんによるネプさんのキルから始まった怒涛の展開、どちらが勝つのか見ものなのです!」

「うん……そう、だね」

「ティアさん? 元気ないのです?」

「……んんっ。そんなこと、ない」


 配信が盛り上がりを見せる傍ら、少女は内心焦っていた。


(なんでこんなときに……緊張のせい?)


 喉に違和感を覚えていた魔霧ティア。

 それに追い打ちをかけるような言葉を見つけてしまう。


《ムルちゃ一人で司会やってない?》

《ティアちゃん大丈夫かな。口数少ないのはいつもどおりだけど……》


 極一部ではあるが、批判の声。

 ここで会話に参加しなければ自分に居場所はない。


(頑張らないと……もっと喋らないと……!)


「はぁ、はぁ…………ぜぇ……っ!」

「ティアさん? 大丈夫なのです!?」


 心の焦りは更なるストレスを生み、病状を悪化させた。

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