第39話 同期とゲーム練習①

 2期生主催イベントまで残り1週間。

 そんな日の昼過ぎに魔霧ティアのチャンネルから珍しく……本当に珍しくもコラボ配信枠が立てられた。

 集められたのは同期である4期生だった。


「みんな、今日はありがと。集まってくれて」

「いやぁ! ティアさんからのお誘いなら例え火の中水の中画面の中ぁ、どこでも駆けつけますよぉ!」

「確かにティアから招集なんて珍しいわね。練習もしたかったから誘われなかったらシューコが引き摺ってでも集めてたけど」

「物騒っスね……あ、センカさんは少し遅れるらしいっス」


《きちゃ》

《全員集まるの久々過ぎないか?》

《おっと不仲説提唱はやめたまえよ》


 異迷ツムリ、絵毘シューコ、久茂ダーク、それに遅れて集合予定の向出センカ。

 同時にデビューして半年経過するものの、全員集まった回数はオフも含め数えられるほどしかない。


「みんなの練習もだけど、ティアも練習したい。司会あるから」

「へぇ、なんか心境の変化でもあったの? 普段ほぼ喋んないのに妙にやる気だし」

「だって、喋らないと歌わされる……」

「え? あんた歌好きじゃなかった?」

「いやぁ最高でしたよねぇあの罰ゲーム。恥じらいながら歌うティアさんが可愛すぎてもう……!!」

「ツムリ、記憶消せ。忘れろ、びーむ」

「ぐぅっ! 忘れたくないのに頭が忘れたがってるぅ……このびーむ強ぃ……」

「あのー、そろそろログインしないっスか?」


《このヲタツムリは相も変わらずw》

《でもわかる》

《最近のティアちゃんいろいろ挑戦してくれてて良き》


「あっ練習の前にぃ、ちょっと見てほしい物があるんですけど良いですかぁ? 実はぁマジクラの練習のために家建ててみましてぇ」

「? 家くらいみんな建てるんじゃないんスか?」

「……なんか嫌な予感する」

「まぁまぁ。こちらが我が家ですけどぉ」

「おおー。ブイアクトの人、いっぱい」

「うわ。痛車ならぬ痛家……」

「中も作り込んでるのでどうぞ上がってくださぁい」


《これ外壁一周するとフルメンバー揃ってるのか》

《本人だけ描かれてないんだよなぁ》

《ストリートアートみたい。スプレー缶のやつ》

《ブイアクトのバンクシーにでもなるつもりか?》


「中は小物の展示ね。それにしてもカラフル過ぎるわ……」

「目がチカチカする」

「知らない素材も多いし結構やり込んでるっスねぇ。ん? あの動いているのは……何で家の中にゾンビ居るんスか!?」

「あ、その子はペットのポチ太郎ですぅ」

「は?」

「魔法で色々作ってたらぁ、偶然錬成?しちゃったみたいでぇ」

「……人体錬成の失敗作ペットにしてるって中々業が深いわね」

「えー我が子だと思ったら可愛くないですかぁ? ほらこうやってジャレついて来たりぃ」

「ダメージ食らってるっスけど」


《ゾンビのペットは草》

《こいつマッドサイエンティストでも目指してるのかw?》


 異迷ツムリの家案内にて雑談していると、4期生最後の一人もログインしてきた。


「待たせたナ。準備万端だヨ」

「センカさんお疲れ様ですぅ。見てください私のお家ぃ……」

「なんで家の中で襲われてんノ? しゃーない助けてやるヨ」

「え?」


 事情を知らないセンカはツムリにダメージを与える存在に照準を合わせ、魔法を放つ。

 赤色の魔法によりゾンビは焼き尽くされた。


「あ……私の、ポチ太郎ぅ……あぅぁ……う゛あ゛あ゛あ゛お゛お゛お゛ぉぉぉ……」

「おい元アイドル。乙女から出ちゃダメな音出てるわよ」

「い゛ま゛も゛ア゛イ゛ト゛ル゛て゛す゛ぅぅぅ!」

「うるさっ」


《ガチ泣きww》

《ペットってネタじゃなかったのかよw》


「え? あれペットだったのカ? じゃあ……ほらこれドロップアイテム。形見の腐った肉」

「こんなの悲しすぎて持ってられませんよぉ……なので食べますぅ。ポチ太郎は私の血肉となって生きるんですぅ」

「大分狂ったこと言ってるけど大丈夫っスか?」

「腐った肉って、猛毒じゃ、なかった?」

「え? あダメージが……あっあっ死にましたぁ!」


《ペットだったものを喰らう異常者》

《死んでリスポーンってことは……血肉になったポチ太郎完全消滅ってこと?》

《せめて形見のまま残しとけばw》


 そんな一悶着もありつつ、この配信の主旨へと切り替える。


「センカさんも来ましたし始めるっスかね」

「その前に目標合わせだけしましょ。相手は全員先輩だけどもちろん勝ちに行くわよね?」

「あたり前だヨ」

「手加減する方が失礼ですよねぇ。まあ私みたいなクソザコが本気出しても相手にならないかもですけどぉ」

「は? 足引っ張ったら◯すから」

「ぴぃっ!? ひゃぃ……」

「何故かツムリさんには厳しいんスよねシューコさん。あ、伏せ字効果音担当のダークっス」


《伏せ字はマズイっスよシューコさんw》

《いやこれもツンデレだと思えば……いける!》

《伏せ字効果音担当ってなんだよwwでもぐっじょぶ!》


「それで各チームの特徴は……ティアはどのくらい知ってる?」

「んと、1期生は個人プレイで、3期生は協力プレイ、2期生はその中間のバランス型、って聞いた」

「あ、それ自分も聞いたことあるっス」

「ブイアクト内だと特にアルさん先輩とツラたん先輩が要注意らしいヨ」

「みんな結構知ってそうね。プレイスキルだけならツララ先輩が圧倒的らしいけど、そのツララ先輩もタイマンの読み合いじゃアルマさんに勝てないらしいわ。まるで心でも読んでるのかってくらいの人読みスキル――――ブイアクトメンバー相手なら的中率ほぼ100%だそうよ」


《ブイアクトゲーマーの2大巨頭》

《アルさんはタイマン格ゲー向けだしチーム戦だとツラたんに軍配が上がるかもな》


「なら3期生と当たるのがベストなんですかねぇ。唯一勝てそうなぁ」

「ツムリ。残念だけど、ティアは3期生応援する。ウラノさん居るから」

「それはちょっとぉ……じゃ、じゃあ1期生ですかねぇ。アルマさんも読み合いさえ避ければ……」

「は? アルマさんがあたしらなんかに負けるわけ無いでしょ? 舐めてんの?」

「えぇ……さっきの勝ちに行く発言はなんだったんですかぁ……?」


《敵チームのファンが多すぎる件》

《番外戦術ファンサがめっちゃ刺さりそう》


「どうでも良いヨ。誰が来ても本気でやるだけなんだからサ」

「っスね。練習始めましょう!」

「じゃあティア、実況の練習するから、画面共有よろ」

「おっけーですぅ」


 そうして始まった4期生チーム練習。

 マジクラウォーのチーム戦モードにてオンラインマッチングを開始する。

 今回の敵は見ず知らずの野良プレイヤーだ。


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