第21話 幕間:導化師アルマ/ロカ・セレブレイト
「次は同期の中でも一番長く時間を共にした人、ロカ・セレブレイトさん」
10周年ライブ直前の逆寄せ書き配信。
導化師アルマは噛み締めるようにその名を呼んだ。
「ロカちんはなんというか、カッコいいよね。姉貴気質っていうのかな? いつも司会進行してくれるしスタッフからの信頼も厚い。私もついつい相談しちゃうんだよなぁ。相談ついでに長話しちゃったりね。趣味は合わないのに一緒に居るとすっごく楽しいの。波長が合うのかも」
まるで恋する乙女のように想い人を褒めちぎる。
「割と強気な性格だからさ、思ったことズバズバ言っちゃうんだよね。なのに言った後で泣きついて来るの。『絶対言い過ぎましたわ……嫌われたらどうしよう……』って。意外とクソ雑魚メンタルなんですよーあのお嬢。たぶん誰にも頼られなくなったら壊れちゃうんじゃないかな? もーそんな面倒くさいとこも可愛くて大好き!」
弱みを暴露しながらもガチ恋ファンのように愛を告げる。
「1期生はさ、全員対等だと思ってるから私としても『導く』対象では無いんだよね。その中でもロカちんは私の道を正してくれるほぼ唯一の存在――――大事な友達なんだぁ」
『生涯親友』と書き綴りエンターキーを押す。
心底嬉しそうに微笑む彼女を見て、呆れるように呟く。
「好き放題言ってくれてますわね……まったく」
アーカイブを見た女性に一つの質問が投げかけられる。
『導化師アルマのことどう思ってる?』
「アルマを? ふむ。一言で言うのであれば……妬ましい、ですわね。ワタクシも頼られる方ではありますがアルマには敵いませんもの。アルマのことを知り尽くしても追いつけない。その劣等感を拭えたのは……アルマに頼られたとき。そのときだけはアルマより上に立てた気がして……後になって自分の小ささが嫌になるんですの」
淡々と、辛辣に答えるつもりだったが、感情が漏れて声に乗ってしまう。
「本当にアルマと一緒に居るとしんどいことだらけですわよ……けど、不思議と楽しいことの方が多いんですの。悪い印象は明確に言葉にできるというのに、良い印象は上手く言い表わせない。これが波長が合うということなのかしら? ええ、本当に……嫌いだけど大好きですわよ。アルマ」
愛を告げられた令嬢は、愛の言葉で虚空に返答する。
『あの曲についてどう思う?』
「あの曲? ああ、ハイエンドピエロ……最低最悪な呪いの歌ですわね」
今度は混じり気のない感情、長年愛され人気を博した曲を吐き捨てるように貶す。
「あの歌詞、考えた人間は相当ねじ曲がってますわね。人気になってしまったのがなおタチの悪いこと。あんな歌アルマに歌わせて……」
憤りの対象は作詞者、彼女の過去を知る一人として、友を想い慄える。
「今だからこそ分かりますの。アルマはずっと考えていたのでしょう――――導化師を辞めたいと」
ロカ・セレブレイトが導化師アルマに抱いていた感情は『同情』だった。
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