第14話 先輩の家でオフコラボ②

 闇鍋企画という名目で始まったオフコラボ配信。

 大方食べつくして酒も回り、雑談タイムに突入しようとしていた。


「ツムリすごいよね。デビューしたばっかりなのに話題が尽きなくて」

「ね。デビュー配信見たよー。特にあの声真似! どんな声でも完璧に真似できるの?」

「あっはい一応……でもお二人にはおよびませんよぉ」

「ん? ボク達のこと知ってくれてるの?」

「当たり前ですよぉ。ジュビアさんの作詞とサタニャさんの作曲、お二人の曲どれも大好きですぅ」

「うんうん。アタシも二人とユニット組んでるおかげで二人の曲が歌えて嬉しいよ―」

「やぁだアルマちゃんまでー。お二人とも褒め上手なんだからぁ☆」

「ども」


《バトルマーメイドの曲ほんと好き》

《さすか元作家とボカロP》


「サタニャさん何やってるんですか?」

「ソシャゲの周回。暇だったから」

「ちょっとサタちゃーん? みんなに失礼だから真面目にやりなー?」

「宅飲みオフコラボなんだからダラダラしても問題ない。むしろ普段の自分をみせた方が視聴者喜ぶ」

「んー。一理あるからギリ許す!」


《お許しが出たw》

《ジューさんには悪いけど正直サタにゃんの言う通りなんだよなぁ》


「アルマちゃんまでー……むぅ」

「やりたきゃみんなやれば良い。まあ忍耐力ないジューさんに周回ゲーは無理だろうけど」

「えー何ふざけたこと抜かしてくれてんのかなぁ? ジュビアイラッとしたぞ☆」

「そのキラキラべしゃりうざいってば。普通に喋れない?」

「あ゛ぁ? あんた喧嘩売ってんの?」

「それそれ。そっちのジューさんのが好きだよ」

「ガチで嬉しくねぇぞバカヤロウ☆」


《二人の喧嘩は見てて安心感ある》

《てぇてぇ供給助かる》


「ジュビサタてぇてぇ助かるー」

「ありがてぇです……!」

「えーなんか拝んでくる限界オタクが二人もいるんだけど。怖ーい」

「アルさんと同じ構えとは……ツムリも将来有望」


《オフコラボなのにただのファン二人混ざってて笑う》

《異迷ツムリお前もか》


「折角のお泊まり会だし恋バナでもしましょかね?」

「えっ恋バナあるんですか? 恋愛禁止だと思ってましたぁ」

「まー異性交遊禁止は暗黙の了解だけど」

「で、君はどんな女がタイプだい?」

「あっそういう……」


《女同士は許される謎の風潮》

《てぇてぇは世界を救うからな》


「好みのタイプですかぁ……キラキラしてる女の子ですかね」

「ほほう」

「アイドルとかすぐに好きになっちゃうんで推しが沢山いるんですよねぇ。けど私は影から見守ってたいというかぁ、壁になりたいというかぁ」

「んーすんごく分かるけどダメだぞ。ツムりんだってもう推される側なんだからさ」

「推される側……うわっ慣れなさすぎてぞわっとしますぅ」

「頑張れ頑張れ。そっちの相思相愛な二人を見習いな」

「えと……とても不服そうなお顔ですね」

「「とても不服です」」


《ジュビサタはもう諦めて受け入れてもろて》

《アルツムもあると思います!》


「そういうアルマさんはどうなんですか?」

「あっジュビアも気になるー!」

「うんうん」

「アタシかぁ。アタシは頑張ってる女の子が好きかな」

「へー案外普通な感じ……」

「うん。特に踠き苦しんでる姿とか良いよね」

「え」

「流れ変わった」

「汗かきベソかき泥まみれになりながらとかもう最っ高! もちろん最後には幸せになって欲しいよ? けど過程も大事だと思うのさ。より大きな幸せには落差も必要だからね。辛いはスパイス! 苦しいは栄養!」

「あれ、今って性癖開示タイムでしたっけ?」

「アルマちゃん酔うと早口オタクになるよね」

「愉悦部員め」


《これがブイアクトを導く者の姿(醜態)か……》

《さすがアルさん。わかりみ深い》


 まるで深夜のテンションのような飲み会風景。

 そんな雑談多めのオフコラボ配信は3時間近く続いた。


「ということで今日の配信はここまで!」

「お泊まり会は続行だけどね」


《えー見たい!》

《寝落ち配信してもろて》


「残念でしたぁここからは関係者以外立ち入り禁止ですぅ。ブイアクトに入って良かったぁ! Foo!」

「この後のことは今度雑談配信で教えてあげるからね☆」


《バチクソ煽りにきてて草》

《メスガキカタツムリw今度の配信覚えてろよw》

《対比でジュビアちゃんが天使に見えるわ》


「はーいそれでは締めの挨拶しましょう。せーの!」

「「「おつあるまー!」」」


 アルマの操作でマイクをオフにし配信枠を終了させる。

 静かになった部屋の中、最初に音を上げたのはツムリだった。


「フラフラしますぅ……」

「飲みすぎかな? ツムリちゃん大丈夫?」

「あんなハイペースで5杯も飲んでたらね」

「うっ気持ち悪……」

「ちょちょちょっ、吐くならトイレでね? 連れてってあげるから!」


 考えなしの新人のお陰で一転して騒がしくなる。

 ジュビアの介抱の元、なんとか事なきを得たツムリが青い顔で戻って来る。


「まさか本当に先輩の家で粗相しかけるとは、やりますなぁ」

「うぅ……すみませぇん……」

「ツムりんは水だけ飲んで早く寝ちゃいなー」

「すみませぇん……」


 机上に広げた鍋や酒瓶を片付け、空いたスペースに布団を敷く。

 一人の酔っ払いが寝付いたのを確認したところでアルマは口を開いた。


「さてと、そろそろ本題話して良いかな」

「やっぱり。アルマちゃんのオフコラボってただのコラボで終わること殆ど無いよね」

「ほぼ必ず、裏で新しい企画の話する」

「何故この4人を集めたのか? それはこの4人じゃなきゃできないことだから、だよね」

「さっすが、よく分かってらっしゃる……じゃあ話そうか。私が思いついた新しい遊び」


 ユニットを組んで長い付き合いの二人。

 アルマがコラボに誘った時点で何かを察していたという。

 さらに二人は自らの見解を語る。


「と言っても、大体予想ついてる」

「4ヶ月後に控えた10周年ライブ。ジュビア達二人と言えば作詞作曲。つまりライブの新曲だね」

「そこに追加されたもう一人、異迷ツムリ。この子が今回の遊びのキー?」

「うん。あの子のおかげで新曲のコンセプトが決まったんだ。だから二人に作曲をお願いしたい」


 ジュビアとサタニャの理解力のおかげでトントン拍子に話は進む。

 しかしアルマは言いにくそうで、どこか申し訳無さそうにゆっくり話す。


「ワガママ言って良いかな? 次に作って欲しい曲さ、バトルマーメイドの曲じゃないんだよね。それでも良い?」

「もちろん。10周年記念のプレゼントに」

「ここまでジュビア達を導いてくれたアルマちゃんへの恩返しだね」

「ありがとう……良い後輩に恵まれて嬉しいよ」


 二人の優しさにアルマは微笑む。

 そして『遊び』の詳細について3人は日を跨ぐまで語った。

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