第13話 先輩の家でオフコラボ①

「お泊まりオフコラボ?」

「はぁい。アルマさんにお誘いされましてぇ……」


 初配信後、導化師アルマから提案された日程の当日になった。

 マネージャーの車で移動中、コラボ企画の詳細を話し合う。

 

「確かに家で準備してたな。けど何をそんなに緊張しているんだ? うちには来たことあるだろう?」

「それがぁ……私の他に二人呼んでるらしくてぇ」

「そういうことか。確かに初対面が二人もいる空間でお泊りは怖いか……」

「もう楽しみすぎて夜も眠れなくてぇ、寝落ちしないか心配なんですぅ。えへぇ」

「あ……そう……」


 フォローを入れるつもりが、思わぬ限界オタクっぷりにマネージャーは言葉を失う。

 アルマが追加で誘った二人、流石にブイアクトのメンバーだろうと考えつつ答えを問う。


「それでその二人って?」

「ふふふ。それはですねぇ。なんとあの3期生の……」







「こーんあるま♪ 本・日・は! 待ちに待った新人さんとのオフコラボだー! 司会はこのアタシにお任せあれ♪ 道化を導く道化こと導化師アルマですー」


《一生待ってた》

《アルツムの時間だぁぁぁあ!!》


「知ってる方も大勢いそうですなぁ。早速ゲストを紹介しましょう! まずは本日の主役、異迷ツムリさんでっす!」

「……え、主役? あどっ、どうもぉ……ぶぶブイアクト4期生の異迷ツムリですぅ。その……緊張と寝不足でゲロりそうですぅ……」

「あははーアタシの部屋なんでやめてもろて」


《大先輩の前で粗相すんなw》

《初コラボでもないだろうにそんな緊張する?》

《公式コラボは初だぞ。非公式コラボ? それは知らん》


「えと、アルマさんだけなら大丈夫なんですけど……あとのお二人がぁ……」

「おっと。それじゃあ紹介させてもらおかな。残るはうちのチャンネルでもお馴染みの二人、ジューさんとサタにゃんです!」


 アルマの紹介と同時に焦点が二人に当たる。

 

「やほやほー。夢中にさせちゃう劇毒尻尾のアンタレス♡ ブイアクト3期生の麻豆ジュビアだよ☆」

「ども。惰眠ラブな眠れるレグルス、ブイアクト3期生の鳴主サタニャです」


 一人は紫色を基調とした蠍尻尾の女性。

 もう一人は茶色を基調とした猫科耳と腕のタテガミ風シュシュが特徴の女性。

 4人のメンバーが出揃いオフコラボが開始した。


「えとあのっ、お二人のこと知ってますぅ! てぇてぇです! 知ったの二週間前ですけど」

「めっちゃ最近じゃん」

「なぁにこのミーハー厄介オタクちゃん」


《その勢いでにわかかよw》

《ミーハー厄介オタクが的確過ぎて草》


「二人とはアタシ含め『バトルマーメイド』っていう3人ユニットでよくコラボするんですよ」

「何でこんなユニット名なんだっけ? マーメイドは名字の頭文字だろうけど」

「サタちゃん忘れちゃったの? アルマちゃんとの絡み増えたきっかけが格闘ゲームだったからだよー」

「そっか格ゲーか。そいえば最近ジューさんボコってないなぁ」

「はいー? ボコられた覚えありませんけどぉ?」

「ん、じゃやる?」


《のっけからバチバチw》

《喧嘩するほど仲が……》

《なんとかは犬も食わないって言うよね》


「はいはいそこまで。今日はもう一人ゲスト居るから遠慮してねー」

「あ、お構いなくぅ。お二人のてぇてぇが間近で見られるなら壁役に徹したいんでぇ」

「そのオタク精神は死ぬほど分かるけどダメでーす。今日は新人イビリの日だからツムりんが主役なのさ」

「あっ今日イビられるんですか……え? ツムりんって私?」


《ツムりんかわよ》

《早くも玩具扱いw》


「さてさてそろそろ今日の企画、『闇鍋オフコラボ』の説明と行きましょうか!」

「あ、大体察しましたぁ」

「オフコラボの定番だよねー」

「はい闇鍋といえば皆さんご存知だと思いますけどね。今回はアタシ達3人が持ち寄った食材で何も知らないツムりんにオモテナシしようって企画になりますー」


《またしても何も知らない新人》

《オモテナシ(パワハラ)》


「てことで出来上がったものがこちら。はいどーん!」

「あっ一緒に作るわけじゃないんですね」

「それだと食材バレちゃうから」

「視聴者のみんなのためにお鍋の画像上げとくねー」


《画像助かる》

《体に悪そうなほどの漆黒w》


「味付けは市販の鍋の素。黒ゴマ風味だってさ」

「食材も食べれるモノしか入ってないから健康は保証するよ☆」

「えぇと、味見はしてくれました……?」

「「「…………」」」

「なんで目ぇ逸らすんですかぁ!?」


《一体何を入れたんだ……》

《ちゃんと完食しろよw》


「ささツムりん。よそってあげるから食べて食べて」

「怖いぃ……い、いただきます。はむ……」

「どう? お味は?」

「うーん食べれなくはないですけどぉ……何これ、唐揚げ?」

「ああ、それ多分ボクの持ってきた酢豚」

「えぇ……食材ってそういう感じですかぁ……?」

「スーパーの惣菜コーナーで美味しそうだったから。ちなみにパイナップル入り」


《料理丸ごとw》

《パイナップル絶対要らないww》


「次はこれを……うわ不味っ。ブニブニして甘ったるい……」

「ジュビアが持ってきたグミかな?」

「何でお菓子入れるんですかぁ……」

「ちなみにジューさんチョコとかマシュマロ入れてたけど、多分溶けてる」

「え、嘘っ勿体ないことしちゃった?」


《料理にお菓子はやめろとあれほど……》

《ジュビアちゃんはメシマズ系女子把握》


「ボク達も食べよ。あ、たこ焼き見っけ。味は悪くない」

「甘い鍋があっても良いと思うんだけど……うわぁイチゴ飴やばーい……☆」

「アルマさんは何入れたんですか?」

「うーん……あ、それ食べてみてくれる?」

「これですか? はむ……え、普通に美味しい?」

「なら良かった。松茸って好み別れるらしいからさ」

「松茸!? そんな高級品がこんな鍋に……」


《こ ん な な べ に》

《確かに勿体ないw》


「良い感じにお腹も膨れてきたし、そろそろ呑みたくなってきたんじゃない? 今日はとっておきのお酒を用意したんだー」

「それはまさか……ブイアクト公式商品!」

「2期生狡噛リリがプロデュースした『獣涙』。開けるんだな……今ここで!」

「えぇ……なんか低予算CMみたいな小芝居始まったんですけどぉ……」


《露骨なステマw》

《案件動画かな?》


「というかお酒って飲んで良いんです? 皆さんの公式年齢って確か……」

「永遠の17歳だよ☆」

「ふっ。活動3年超えてる時点で公式年齢なんてただの飾り」

「わぁメタぁい」

「ん、辛口で爽やかな味わい」

「おいしい! 視聴者の皆も絶対飲んだほうが良いよ☆」

「やっぱり宣伝だった……あ、でもホントにおいしーですぅ」


《公式年齢が飾りは草》

《獣涙飲んだけどマジでオススメ》

《ツムリちゃんもお酒飲めるタイプか》


 闇鍋企画という名目で始まったオフコラボ配信。

 大方食べつくして酒も回り、雑談タイムに突入しようとしていた。

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