属性魔法

「では今日の訓練は終わり!

お疲れ様っしたー!」


「「お疲れ様でした!」」




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈




「ここが勇者様の宿舎となっております」


礼儀正しい老人に案内されて、二階建ての建造物に来た。


どうやらここで生活するらしい。


「部屋どこにするか決めたか!?」


元気の良い男が尋ねてきた。


「えっと……君は」


「俺は高橋海人!」


「時谷蓮です。よろしく!」


「おうよ!」


「それで……部屋決めだっけ?

どこの部屋空いてるか聞いてなかったんだけど、教えてくれない?」


「確か……」


「中央階段の横の部屋4つですー!」


桃色の髪の少女が話に入ってきた。


「そうそう!俺は一階にするつもりだぜ!」


金髪の男はそう言った。


「私も一階がいいですー!」


「じゃあ俺は二階で

……直美も二階でいい?」


少し離れて様子を伺っている女性に問いかけた。


「いいよ」


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


(今日は疲れたな)


召喚に魔法。


それは日常生活100日分の情報量に匹敵するような気がした。


「よし!そろそろ寝るか!」


もう遅いので、無駄に豪華なベッドに寝転がった。




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈




コンコンと扉から聞こえてきた。


窓からは太陽光が降り注ぎ、もう朝になったと分かる。


「……はい!」


眠い目をこすりながら、扉に向かった。


「おはよう」


そこには直美がいた。


「おはようございます!

今起きたばっかだから、ちょっと待って」


「分かったわ」



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



「今日は属性魔法だ!

ついでに蓮には時間魔法を使ってもらう!」


「「おー!」」


俺と直美は心を弾ませた。


「まずは属性魔法!

魔力を集めながら詠唱で使えるぞ!

では訓練用人形の前に行って!」


俺は昨日と同じ人形の前に立った。


(今日こそは壊してやるぜ!)


「では、あたしに続いて詠唱して!

火の精霊よ!

火球で敵を燃やし尽くせ!

ファイアーボール!」


俺達も詠唱した。


すると、魔法陣が出現し、そこから炎の球が現れた。


そして、火球は人形に飛んでいった。


小さな爆発音が鳴り、火球は爆発した。


しかし、人形はビクともしない。


(やっぱ駄目かー)


俺が落ち込んでいると、昨日のように轟音が鳴り響いた。


「まじか……」


直美の火球は狙った人形どころか、

横にある俺の人形まで消し炭にした。


「やはり凄いな!」


少女は賞賛した。


(俺魔法の才能無いかも……)


などと落ち込んだ様子を見せていると、少女が駆け寄ってきた。


「蓮も昨日より成長してるぞ!

なんせ訓練用人形に当たったんだからな!」


その言葉で救われた気がした。


「これって無詠唱でも出来ますか?」


直美がそう言った。


「勿論だ!」


少女が手を開くと、そこから炎が現れた。


「「おー!」」


「詠唱で属性の変換に慣れると出来るようになるぞ!」


「なるほど……やってみます」


直美はそう言った。


「了解!その間に蓮に固有魔法を教える!」


「固有魔法?」


「ああ、説明するの忘れてた!

固有魔法ってのは、スキルが無いと使えない魔法の事!

火、水、土、風、無以外の属性はスキルが無いと使えないよ!」


「へー」


「じゃあやってみよう!」


「はい!」




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈




約30分前から寝ようとしてみたが、胸が騒いで中々寝付けない。


(全然使えなかった……)


俺は寝れない時、今日起きた出来事を振り返る。


あれから時間魔法を使おうとしてみたが、想像できない時間を操る事は出来なかった。


(そろそろ寝るか!)


そう思った時、扉に何かがぶつかった。


(ん?何の音だ?)


俺は不思議に思い、扉に近付いた。


そして恐る恐る扉を開いた。


(ん?何も……)


開いた直後、鉄の臭いが漂ってきた。


「おい!直美大丈夫か!?」


扉の前には血まみれの直美が倒れている。


「に……げて」


「逃げるって何から……」


嫌な予感がして後ろを振り返った。


すると、剣が迫っていた。


俺はすぐに回避しようとした。


「……?」


一瞬何が起こっているか分からなかった。


左足が熱い。燃えているようだ。


何かが左足から滴り落ちる。


見てみると赤い液体だった。


「何なんだよ!」


俺は逃げようとしたが、左足が動こうとしない。


その時、心臓も熱くなった。


どうやら剣で貫かれたらしい。


(こんなところで終わりなのか……?)


廊下には鉄の臭いが漂っている。


後ろを見ると、骸骨の大群が迫っている。


更に、心臓には剣が刺さっていて、絶望的な状況だ。


俺はうつ伏せになり、ただ死を待つ。


「もっと強いスキルだったら良かったのにな……」


時計が目に入り込んだ。


針は止まることなく動き続ける。


今は午後11時32分らしい。


(時間が戻れば良いのにな……)


俺は静かに目を閉じた。




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈




石で造られた壁、鎧を着た兵士。


更に、十数メートル先に玉座の物に老人が座っている。


また、横には三人の若者がいた。


そこで俺は確信した。


(時間が……戻ってる)

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