魔法

その後、各自訓練を受ける事になった。


俺と黒髪の女性は攻撃魔法の訓練、

桃色の髪の少女は回復魔法の訓練、

金髪の男は確か……剣術の訓練だった気がする。


今は訓練所に移動している最中だ。


「お名前聞いてもいいですか?」


黒髪の女性はそう言った。


「時谷蓮です!君は?」


「加藤直美よ。これからよろしく」


「よろしくお願いします!」


「敬語はいらないわ。そんなに歳変わらないでしょ?」


「そうなんですか?俺は16です」


「……私は18。老けて見えるってこと?」


「そ、そうじゃなくて大人びて見えるから20代かと」


俺は乾いた笑い声をあげた。


「なるほど?」


直美がそう言った時、道案内をしていた兵士は立ち止まった。


「ここが攻撃魔法の訓練所です。講師が来るまで中でお待ちください」


「「はい」」


扉を開くと、体育館のような空間が広がっていた。


カカシのような物が等間隔で並んでおり威圧感を放っている。


恐らく魔法の攻撃力を試すためのダミー人形だろう。


「ゲームで見た事あるような光景ね」


「だね!」


そんな事を言っていると、扉が一気に開いて大きな音を立てた。


「やあやあ!勇者達よ!あたしが講師のナターシャだ!」


耳が長い白髪の少女。身長から考えると歳は12位だろうか。


(エルフか!?)


などと思っていると、

少女は気まずそうに言葉を発した。


「……えっと

もしかしてテンション間違えた?」


「かもです」


「……まあよい!早速訓練を始める!

まずは無属性魔法だ!

無属性魔法は速射性に優れるが、

コントロールが難しいぞ!

では、魔力が飛んでいくのを想像して……

訓練用人形に放つのだ!」


「「はい!」」


俺は人形に向けて手を伸ばし、魔力が飛んでいくのを想像した。


(心なしか魔力的なのが身体中に流れてる気がする!)


それを手のひらに集めて放った。


「……え?」


しかし、何も出なかった。


「ま、まあそういう事もある!

どんまいどんまい気にすんな!」


(まじかよ……)


「次私がやるわ」


「どぞどぞ!」


少女は元気よく言った。


直美は集中して手のひらを人形に向けた。


その瞬間、白い光が飛んでいった。


それが人形に衝突すると、

轟音が訓練所に響き渡り、人形は消し飛んだ。


「す、すげぇ」


俺は無意識に声をあげていた。


「おー!中々やるではないか!」


「ありがとうございます」


「君には教えることはほとんど無い!

ところで少年……えっと名前なんだっけ?」


「蓮です」


「蓮には魔力操作から教える!

そこの天才はしばらくの間自主練してくれ!」


「……分かりました」


すると、少女はこちらに来て手を差し出した。


(触れろって事かな?)


俺は手を置いた。


「これが魔力の流れ!

どう?感じるか?」


ナターシャの手に触れると、温かい何かが流れ込んできた。


「暖かい何かが来てますね」


「そう!それだ!

その流れを掴め!」


何となく掴んだ気がする。


「もう一度魔法使ってきます!」


「頑張れよ!少年!」


俺は温かい何かを手のひらに集めた。


(こい!)


そして、それを一気に放った。


すると、白い光が飛んでいった。


直美のとは異なり、細くて光も弱い。


しかも、人形には当たらずに空中で光が散っていった。


だけど、魔法を使えたという事実に俺は喜んだ。

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