時の勇者はそろそろ勝ちたい……!~時間魔法が弱すぎる件~

@kumayarooo

一周目

「こんなところで終わりなのか……?」


廊下には鉄の臭いが漂っている。


心臓には剣が刺さっていて、絶望的な状況だ。


俺はうつ伏せになり、ただ死を待つ。


「もっと強いスキルだったら良かったのにな……」




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈




二日前……


気がつくと知らない場所にいた。


石で造られた壁、鎧を着た兵士。


更に、十数メートル先に玉座の物に老人が座っている。


また、横には三人の若者がいた。


そこで俺は確信した。


(異世界召喚だあああ!)


小説で何度も見た異世界召喚……いや、今回の場合は勇者召喚と言うべきか。


そんな事を考えていた時、老人は大声をあげた。


「勇者よ!よくぞ来た!

早速だがお主らにはスキル鑑定をしてもらう!」


「スキル鑑定……?」


右の小柄な女性が尋ねる。


「ゲームとかやった事ないの?スキルは超能力みたいなもの」


左の大人びた女性がそう答えた。


「なるほどー!」


そんな話をしていると、水晶玉を持った兵士が近付いてきた。


「ここに手を触れてください」


低い声でそう言った。


「じゃ、じゃあ私からー!」


桃色の髪の少女は水晶玉に手を置いた。


すると、それは輝いた。


(これがスキル鑑定……か!)


「どうじゃった?」


遠くの老人は少女に問いかけた。


「最上位回復魔法らしいですー!」


少女がそう言うと、人々は驚いた。


「最上位回復魔法!この国でも一人しか扱えない魔法なのじゃ!」


「おー!私もしかして凄いですかー!?」


「凄いぞ!……では次は誰が鑑定するのじゃ?」


「私が鑑定してもいいかしら?」


黒髪の女性が立候補した。


「では手をかざして下さい」


再び水晶玉は輝き出した。


「……賢者です」


「全ての魔法適正を大幅に上げ、魔力を増加させるスキルじゃな!」


「そうですか」


クールな女性は内心ガッツポーズをしていそうだった。


「じゃあ次、俺がしようかな!」


左にいた金髪の男はそう言った。


「では手を」


慣れた様子で男は手をかざした。


「聖剣召喚らしいぜ!」


「な、なんと!本当に現れるとは!」


「珍しいスキルなんすか?」


「ああ。前に現れたのは10年前じゃ……」


「やったぜ!」


男は子どものように喜んだ。


「では、最後の君」


「はい」


俺は同じように手をかざした。


すると、無機質な声が聞こえてきた。


「あなたのスキルは時間魔法です。

魔力を消費することによって時間を操る魔法です」


(つ、強そう!)


ワクワクしていると、老人は声をあげた


「どうじゃった?」


「時間魔法でした!」


「時間魔法……か」


(もしかして持ってたらダメなスキルとかなのか?)


歯切れの悪い回答に悪い想像が浮かんできた。


「知らないスキルじゃな!」


王は大袈裟に笑った。


(あー良かった!

追放される流れかと思ったよ……)

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