第3話 魔王、絶望する

え?なんで?

なんで転生したのに元の世界にいるの?

これって転生失敗だよね?

ねぇ?


「アドラリア様、調子はいかがですか?」

リリーが話しかけてきた。


我、今赤ん坊みたいだけど、言葉話せるかな?

「あ、あー。リリー。我だけど、聞こえる?」


「アドラリア様!生まれたばかりなのにお話できるのですね!」


よかった。どうやら聞こえるみたい。


「えっと…調子はどう…だっけ?」

「はい!」


我は本音をぶちまける。


「もう最悪の気分だよ!絶望のドン底だよ!」


なんで転生したのに、元いた世界なんだよ!?

おかしいだろ!


「なぜです!?私たち魔族のためにお戻り下さったのではないのですか!?」


「んなわけあるか!我はここより平和な世界に転生したかったんだけど!?」


「この世界の何が不満だとおっしゃるのです?アドラリア様は魔王として魔族の頂点に君臨し、人間たちの畏怖の象徴となっているのですよ!」


「それがダメなんだって!我が復活したってバレたらまたあの勇者一行が戻ってきちゃうじゃん!」


「…ですが一度は戦った相手、2度も同じ手は食わないでしょう?返り討ちにするのみではありませんか」


「それがさ、我って今生まれたばっかじゃん?めっちゃ身体も魔力も弱体化してるよ?今あの勇者たちと戦っても、我が一方的にボコボコにされるだけだよ?」


「それもそうですね…アドラリア様が復活した事実が人間に知られなければいいのですが…」


今、戦っても勝てるわけがない。

それに、我はもう平和主義者だ。

戦いたくない。


でも、我が復活したと分かれば勇者はすぐに戻ってくる。

どうすれば…ん?


…復活した事実が人間に知られなければいい?あ…そうだ!

それだ!


「それだ!」

「アドラリア様?」


「我、勇者に正体隠すわ!」

「はい?」


「勇者と戦うのは怖いので、勇者には隠密で生活することにします!」

「えぇぇぇぇぇ!?」

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