第2話 魔王、転生する

一方その頃、魔王城では…。


「魔王様が討たれただと!?」

「バカなっ…!?あの魔王様が!?」

「勇者一行め!許せん!」

「おのれ、敵討ちにしてくれるわ!」


魔王討伐との報がたちまち城内に広まり、彼の配下である魔族たちは皆、驚きと怒りの嵐であった。


「…その話、本当なのかしら?」

彼の側近である女性魔族のリリーは、配下の1人に問いかけた。


「はい、どうやら本当のようです…」

「そう、強いのね。勇者たちは」


「リリー様?悲しくはないのですか?」


「いいえ、もちろん悲しいわよ?でも私は信じているわ。アドラリア様は必ず私たちのために戻ってきて下さるはずよ」


………………………………………………………


…おのれ、あの勇者どもめ。

よくもこの我を討伐してくれたな。


…まぁよい。

丁度この世界にも嫌気が差していたところだった。


元々、魔族は人間と敵対しており、我はその魔族たちの王であるため、人間との戦いは日常茶飯事であったからな。


人間との戦いで配下は続々と死に絶えていき、我に傷を負わせる人間も度々いた。

そのため我は、ずっと平和な生活を送りたいと思っていた。


そこで勇者一行に討たれる寸前、転生魔法を行使していたのだ。

これで平和な世界に転生できるぞ。


………………………………………………………


…ん。

転生成功だな。


目を開けた時、視界に光が差し込んだ。

我は寝そべっている。

どうやらまだ生まれたばかりの赤ん坊のようだ。


ここは薄暗い部屋の中か?

上を見ると真っ黒い天井で、横を見ると、禍々しい感じの赤い椅子があった。


…あれ?

なんか見覚えのある風景だな?


「あ!アドラリア様!お目覚めになりましたか!?」


この顔、この声、この金髪、この眼鏡はまさか…我の側近のリリーか?

なぜ彼女がいるのだ?


「アドラリア様!転生は成功のようですね!」


え?転生?

我、本当に転生したの?

ならなんでリリーがいるの?


「皆の者、喜びなさい!魔王様は転生により魔王城に戻ってこられたわ!」


「ウォォォ!」

「アドラリア様ー!」

「魔王様バンザーイ!」


どうやらリリーだけでなく、他の配下もいるようだ。

それに部屋の中をよく見ると、我が座っていた玉座がある部屋だった。


これって…。

我、元いた世界に転生したってこと!?

てことは転生後も魔王続行じゃん!

ふざけんなよぉぉぉぉぉ!

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