隠密魔王 〜勇者に倒された魔王、転生後も魔王だったので勇者には隠密に生きることにしました〜
巫有澄
第1話 魔王、倒される
ここはとある荒地。
辺り一面に魔力の瘴気が立ち込めており、闇の霧が漂っている。
そして、今ここで世界の命運を懸けた戦いが繰り広げられている真っ最中である。
「…フハハハ!この程度か!勇者共よ!」
魔王アドラリアは高らかに笑っていた。
現在、自分に挑んできた勇者一行を返り討ちにしたからだ。
アドラリアは世界を征服する魔王。
これまでに幾度となく、アドラリアを倒そうと彼に立ち向かう冒険者が数多くいたが、全く歯が立たなかった。
「くっ…!このままじゃ全滅だ!皆、力を貸してくれ!」
「おう!」
「やるしかありませんね…」
「仕方ないわね…」
勇者ダイヤ、戦士スペード、僧侶クローバー、魔法使いハートは4人で手を重ね合わせ、“とある魔法”を発動しようとする。
「まだ足掻くか、人間ども。そんな傷だらけの体で何ができる?」
「そう言っていられるのも今のうちだぜ」
「なにをするつもりだ?……ッ!?」
その瞬間、アドラリアの背筋に悪寒が走った。
「終わらせてやるよ、魔王アドラリア!」
「おい…!待て!やめろ!」
勇者たちの魔法に恐怖を覚えたアドラリアは、必死に命乞いをする。
しかしそんな命乞いも虚しく、勇者たちの手からその魔法が放たれる。
「いくぞ!」
「いくぜ!」
「いきますよ!」
「いくわよ!」
勇者たちは声を合わせて叫んだ。
「「「「
勇者一行は、対魔王用に特化した浄化魔法〈サタンスレイヤー〉を発動した。
4人の手から強烈な光が放たれる。
アドラリアはその光を一気に浴びた。
すると、その効果は予想以上のようだ。
「グァァァッ…!おのれっ!…この我が!…人間如きにぃぃぃっ…!」
アドラリアの体は、光に包まれていくと同時にどんどん灰になっていく。
「見事だ…勇者…よ」
やがてアドラリアは完全に灰と化し、消えていった。
アドラリアが消えたことで、彼の魔力で形成されていた魔力の瘴気も消滅した。
「やっ…た。倒した…」
「やったな!倒したぞ!」
「手強い相手でしたね…」
「はぁぁぁ…。私もう魔力すっからかん…」
こうして勇者一行は見事、魔王アドラリアの討伐に成功したのである。
「ついに魔王は討ち倒された。俺たちで平和な世界を取り戻したんだ!」
「おう!険しい旅だったが、お前らと冒険ができて俺も楽しかったぜ!」
「おや、旅はまだ終わっていませんよ。王都に帰るまでが旅ですからね」
「えぇ〜?私もうクタクタなんだけど〜!?」
勇者一行は冒険の疲れを労い合いながら、王都へと帰還するのだった。
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