あなたと私は似てるから。

第1話

思春期の陰キャにはありがちというかお約束ですが、クラスの外側にいるような立ち位置なので。

クラスメイトの「立場」の縮図。感情の起伏の捉え方。カースト。各々の気質が感じ取れて。

次に相手がどんな口調でどんなフレーズを言いだすか、わかる時があります。

そうすると……、相手のセリフと自分の発言を被らせたり。全く同じ動きができたりする。

トレスできる。

この子の口調と一人称と考え方と性格はこうだもんなー、と感じとり。

発言を呼吸を合わせてトレスしていたら。

仲良しの子なら大抵は「共感」が起きたのだと喜びを感じ、セリフがピッタリ合ったことに親和性を感じ、面白い現象に笑ってくれます。

そんなふうに会話や「つぶやき」を「共有」できる相手がいるだけまだマシです。

マジもんのぼっちは辛いぞー。なぜなら誰も話しかけてくれないし空気扱いだし、こっちにおいでよ、なんて声なんてかけてもらえないし、別に一人が本当に大好きすぎるとかそうじゃねえから。

強がりだし。

世の中一人が楽で楽でしょうがない人ももちろんいるけど、「共有」すること、「共感」することもまたアオハル。

ましてや発言が一字一句カブるなんて学生には

「奇跡！」

みたいな華やかな賑わいが生まれます。

そんな折、相手が落ち込んだり、自分が体調不良でメンタルやられた時に言われるのです。

「あなたと私は似てるから……」

寄せてるだけだよ。

ちょっと前の言葉で言えば、空気読んだだけ。普段一緒にいるから、心を「推測」して思考をトレスしただけ。

その言葉を先に言われたら、最後。

言われた側は、その子のレプリカ。

「類似品」にされてしまうのです。

あくまで「オリジナル」はこちらです、と宣言されたような。

……。人格読んでただけです。けして心が読めるとか読心術だなんていいませんが。

あなたの「ノリ」と「性格」と「間」を掴んだだけです。

あなたも、協調性を得るために、誰かのレプリカになってませんか？

そのレプリカチケットは、相手を下敷きにして、絵や字をなぞる、トレス行為で。

けして悪いことでも疲れることでもないけれど。

私は、あなたじゃない。似ていない。似せるつもりもない。ただ、「仲良く」してただけ。

けして自分は消えない。

だって、「他人をトレスしている自分」がちゃんといるから。

だから、周りに合わせるだけに感じている人生も悪くないんじゃないかな。

たまに類似品発言されるだけで。

中高生って、解き放たれていてほしいよね。

私は今、抑圧されて気がする。

それが社会人てものなのかな、とも思いますけど。

解き放たれた無理のない、だれの似たもの同士でもない、唯一の、たいせつな個性。

そんな存在の集まりも憧れます。

心の自由は、どこに作成するべきだったのだろう。

作成せずとも、拡がるものであってほしかった。

どうかお若いみなさん。

酷い奴にならないで。

なりたくなければならなくていい。

あなた方が、唯一です。