第10話:運命の試練
フィオを仲間に加えた僕たちは、遺跡のさらに奥へと進んでいた。そこには、今までの廃墟とは違う、古代の雰囲気が漂う巨大な石碑が立ち並んでいた。どの石碑にも複雑なルーン文字が刻まれており、見るだけで圧倒されるような存在感を放っている。
「ここは…ヴァルハランの遺跡に違いない。こんな規模のもの、今まで見たことがないわ」
エリスが驚きの表情で言った。僕も、フィオもその荘厳な雰囲気に一瞬足を止めてしまう。
「でも、どうやって進めばいいんだ?石碑が道を塞いでいるし、特に出口も見当たらない」
「待って、これを見て」
エリスが指差したのは、中央に鎮座する巨大な石碑。その中央には、僕が持つ運命の書と同じ紋様が刻まれていた。
「運命の書に繋がる何かが、ここに隠されているのか?」
僕がそう言って近づこうとした時、突然周囲の空気が揺れ始めた。石碑の文字が青白く光り出し、遺跡全体が響くような低い音を立てた。
「気をつけて…何かが起こるわ!」
エリスの警告と同時に、石碑からまるで影のような黒い存在が浮かび上がった。それは僕たちを睨みつけるかのように立ち塞がり、その姿を巨大な獣へと変えた。
「また魔物か…!」
僕は剣を構えたが、その魔物は尋常ではなかった。僕が攻撃を仕掛けようとするより早く、魔物は空間そのものを歪ませ、僕の周囲を囲むように広がっていく。
「まずい、こいつの力は…空間を操る!」
エリスが冷静に状況を分析しながらも、その目には焦りが見えた。このままでは僕たちは魔物に取り込まれてしまう。
その時、僕の胸の中でフィオが動き出した。
「フィオ、何か感じているのか…?」
フィオの額の紋章が再び輝き始め、その光が魔物に向かってまっすぐ放たれた。光は魔物の歪んだ空間を打ち破り、その動きを止めた。
「フィオが空間の力を封じた…!すごい、今ならチャンスだ!」
エリスが叫び、僕はフィオの作った隙を突いて魔物に突進した。剣を振り下ろし、魔物の中心に切り込むと、まるで空気が抜けるように魔物は消滅していった。
「よし…倒した!」
僕は息を整えながら、フィオを抱き上げた。彼は疲れた様子も見せず、満足げに軽く鳴いて僕に寄り添った。
「フィオ、ありがとう。本当に君がいて助かったよ」
エリスも優しく微笑みながらフィオを撫でた。彼の力が、僕たちの旅にとってますます欠かせないものになっている。
「でも、これで終わりじゃないわ。ここはヴァルハランの遺跡…試練はまだ続くはず」
僕たちは気を引き締め、次なる試練に備えながら、さらに奥へと足を進めた。
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