第11話:霧の試練
ヴァルハランの遺跡の奥へ進むにつれて、空気はどんどん冷たくなり、霧が濃く立ち込めてきた。僕たちは次の試練に直面していることを肌で感じていた。
「この霧…ただの自然現象じゃないわね」
エリスが慎重に前を見据えながら言う。僕たちの視界はどんどん奪われ、数メートル先すら見通せないほどの白い壁に包まれた。足元の石畳すらぼんやりとしか見えない。
「このままじゃ進めないな…フィオ、何か感じるか?」
僕はフィオを抱き上げて呼びかけた。フィオは目を細めて周囲の霧をじっと見つめていた。そして、次の瞬間、彼の額の紋章が柔らかな金色に輝き始めた。
「フィオ、また力を発揮してくれるのか?」
その光が霧の中に広がり、僕たちの周囲を包むように光のドームが形成された。霧がその光に触れると、まるで霧自体が押し戻されるかのように消え、僕たちの進むべき道が一筋、明るく照らし出された。
「すごい…フィオが道を作ってくれたわ」
エリスが感嘆の声を上げる。僕たちはフィオの導く道に従い、迷うことなく霧の中を進んでいった。
だが、しばらく進むと、霧の中から何者かの影が現れた。それは人間のような姿をしているが、その目には生気がなく、まるで霧が生み出した幻のようだった。
「これは幻か…?」
僕は剣を抜いて警戒したが、その影は僕たちに襲いかかることはなく、ただじっとこちらを見つめていた。その目には、まるで何かを訴えかけるような哀しみが宿っている。
「待って…あれはただの幻じゃない。かつてこの遺跡で試練に敗れた者たちの…残留思念かもしれないわ」
エリスが緊張した面持ちで言った。
「彼らは道を見失い、ここで永遠にさまよっているのか…」
その言葉に僕の心は揺れた。この遺跡が試練を乗り越えられなかった者たちをどれだけ飲み込んできたのか、考えるだけで背筋が冷たくなった。
「でも、僕たちは進まなきゃならない」
僕は覚悟を決め、フィオを強く抱きしめた。フィオも、まるで僕の気持ちに応えるかのように、小さく鳴いて前を見据えた。
「行こう、フィオが道を示してくれてるんだ。僕たちは進み続けるしかない」
エリスもうなずき、僕たちはさらに奥へと足を進めた。道は険しく、霧の中にはまだ多くの影が潜んでいたが、フィオの光がそれらを優しく照らし続け、僕たちは迷うことなく進むことができた。
やがて、霧が徐々に薄れ始めた。その先に待ち受けるのは、新たな試練か、それとも…。
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