第9話:フィオの力、発言
新たな仲間フィオを迎え入れ、僕たちは遺跡の奥へと進んでいた。巻物を手に入れたものの、その内容はまだ全てが解明されたわけではない。運命の書の全貌に迫るためには、さらに情報を集める必要があった。
「この遺跡の出口は近いはずよ」
エリスが巻物に刻まれた地図を確認しながら、僕たちは慎重に進んだ。しかし、その時だった。壁に描かれたルーン文字が突然、青白く光り始めた。
「何かが…来る!」
エリスが警告を発するより早く、目の前の空間がねじれるように歪み、そこから巨大な影が現れた。それは漆黒の翼を持つ魔物で、目には邪悪な光が宿っている。
「こんなところで…!」
僕はすぐに剣を構えたが、その魔物は普通の敵ではなかった。周囲の魔力を吸い取り、次第に巨大化していく。
「これはまずいわ。あの魔物、私たちの魔力を吸収している…」
エリスが焦りを滲ませながら言った。僕たちの魔力では対抗できない相手だ。
その時、僕の腕の中にいたフィオが突然、強く鳴き声を上げた。そして、額の紋章が再び輝き始める。
「フィオ…?」
フィオは僕の手から軽やかに飛び出し、魔物に向かって立ちはだかった。次の瞬間、フィオの額の紋章から眩いばかりの光が放たれた。その光は空間全体に広がり、魔物の体に触れると、その力を封じるかのように魔物は動きを止めた。
「これは…フィオの力?」
エリスが驚いた声を上げる。フィオの光は、魔力を吸収する魔物の動きを封じ込め、その巨大化を止めていた。まるで魔物の魔力吸収能力を打ち消すかのようだ。
「今だ、廉!あの魔物を倒して!」
エリスの指示に従い、僕は一気に魔物に向かって剣を振り下ろした。フィオの光に封じられた魔物は、もはや抵抗することができず、僕の剣によってその体は砕け散った。
「やった…!」
僕は息を切らしながらフィオに目を向けた。フィオは満足げに軽く鳴き、再び僕の腕に飛び込んできた。
「フィオがいなかったら、あの魔物には勝てなかったわね。本当に頼もしい仲間ね」
エリスが優しくフィオを撫でながら言った。フィオはただの可愛いマスコットではなく、確かな力を持つ仲間だったのだ。
「ありがとう、フィオ。君がいてくれて助かったよ」
僕はフィオに感謝の言葉をかけ、これからも彼の力がどんな場面で発揮されるのか、期待に胸を膨らませた。
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