何者かになりたくて。
ヤマノカジ
小さな幸せ
#VRchatはじめました
これを投稿してもう三ヶ月が経とうとしている。
あの頃はなんのパブリックアバター使ってたっけなぁなんて感傷に浸りながらヘッドセッドを被る。
最近はよくフレンド+にこもってパブリックの話し方なんてなんだっけ?みたいな感じでVRchatをやっている。
ヘッドセットの重さも、もう自分の一部のように感じていてVR感覚なるものも最近出てきた。
前フレンドに撫でたら変な声出しちまったし…。
恥ぃ恥ぃ。
今日はどうしよっかな〜?
俺はとりあえずパブリックにいくのはなんか気が重く他人任せのフレンド+のインスタンスを作りフレンドがjoinしてくるのを待った。
数十分した時、ワールドにインした音がした。
「こんばんは〜」
「うぇいっ」
彼は俺と同時期に始めたフレンドだ。
いつもこうやってフレンド+とかにjoinしてきてくれてて嬉しい。
一緒に最新のYoutubeなんて見ながら駄弁っていると話を切り出された。
「そういえばさ、自分言いたいことあるんですよ」
「ん?なにー?」
いつも自分から話題出さないタイプなのに珍しいなんて考えていたら相手がすぐさま本題を言ってきた。
「自分イベントするんすよ」
「…?あ、イベントね!はぇ〜いいじゃん!どーゆーの?」
「まぁなんていうんだろ…?いわゆるコンカフェみたいな?」
「あぁねぇ〜いいじゃん頑張ってよ!」
「ありがと」
彼のアバター越しの笑顔が眩しかった。
数日後
イベントカレンダーを見ていたら彼主催のイベントがあった。
イベント参加してやるか!なんて少し上から目線で俺はイベントに入る準備に取り掛かることにした。
イベントの数十分ぐらい前には俺はVRchatにログインしていた。
イベント開始時間、俺は彼のインスタンスにjoinした
なかなかワールドも凝ってて最初からすごいやる気だなんてあっけになっていた。
彼が俺のことに気づくとフレンドとしても扱いながらも一般の客として扱い、案内してくれた。
楽しい時間だった。
イベント終わり、俺は彼のイベントに対する熱意なんかを聞いていた。
俺にはないような熱意。
少しかっこいいと思った。
だがそこには少しの嫉妬というスパイスが入っていた。
第4回ぐらいのタイミング、新たなキャストなんかを彼は見つけていた。
俺の知らない人で少しびっくりしたが平常心を保てた。
俺は今もじもじしている。
イベント後俺は彼と喋りたい。
2人きりで。昔みたいに。
最近はイベント関係のことばっか。
イベントイベントイベント。
俺には付いてけない。
またただ動画プレイヤーで各々が面白いと思った動画を流し合う時間が恋しくなっていた。
集合写真の時間、
俺は彼の隣に行こうとしたが、既に人がいた。
隣いい?
と言いかけた。
流石にキモいと思ったから喉で止まったけど…
カメラのシャッターの音と共に彼と俺の壁が大きくなった気がした。
「この後さ、一緒にワールドどっかいかない?」
俺は少しの希望を持って彼に喋りかける
「あぁっ、ごめん!スタッフ陣で色々と喋らないと行かないからさ!また機会あったらでいい?」
「うん。わかった」
イベント会場も最初より綺麗になっていて努力の証が見える。
俺はその間何をしていたんだ。
ただ1人、パブリックでタバコをふかしながら誰か喋りかけてくれないかななんて無責任な立ちんぼもどきをしていただけじゃないか?
俺は何者なんだ?
無個性。
劣等感。
粗悪品。
誰に何も与えていない。
何も創作していない。
何者かになりたい。
アイツみたいにさ。
「じゃあ寝るわ!(笑)おつ!(笑)」
「うん、おやすみ」
俺は必死に言葉を出した。泣きたくて泣きたくて、仕方なかった。
だけど我慢した。
だって、大好きなアイツの前だから。
ヘッドセットが汚くなるぐらい目頭が熱くなっていた。
一人暮らし。
孤独な部屋。
いつもより早い心臓の音だけが鳴り響いていた
何者かになりたくて。 ヤマノカジ @yAMaDied
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