第8話:出会い

「ギュウジィ軍曹、残念だが君の申し立てには応じられない」


「なぜですか!?敵は目前に…!」


派手に飾った部屋の中で軍服を着る二人の男。小太りの男は椅子に座り、もう一人は黒い軍服の深い青髪。青髪の青年の名を、ギュウジィ・メイファス、翔機乗りだ。彼の申し立てはずばり、ジュンらの乗る空母エンタープライズを沈めに行くこと。だがこれはあっさりと断られてしまう。

「敵は君の隊を全滅させた… それに敵は我らの翔機より劣る性能の翔機を使っていたと報告にある、つまり、性能でも技量でも優っている君らが負けたのに、我らがその尻拭いをする道理はない」


何も言い返せない。どうして僕らが負けたんだ?戦力は申し分なかったはず… 油断はしていたとはいえ相手は少数、本来なら勝てるはずの戦…

「君は一度内地に戻ってみては良いのではないのかね?今日に至るまで休む暇もなく戦っていたはずだ」


「… 軍を去れと?」


「休暇だよ。君にもまだ家族がいるはずだ、一度会うべきではないのかね?」


ギュレイは震える右拳を押さえつけながらその部屋を後にした。


空母エンタープライズの艦橋にて、艦長椅子に座るベネトリク・ラーデム少佐は険しい表情で一点を見つめる。戦闘から27時間が経過したあたりからだ。

「どうしたのですか、少佐?」


金髪の軍服を着た女性が沈黙を破った。

「いや… 敵が追いつくのが早すぎると思ってね… 僕らが地球へ向かってるのを知ってるのは元帥だけのはずなんだ…」


「無線が傍受されていた可能性は?」


「あり得る… 使ったのはセーフティ・ネットだけどなぁ…」


レッドドック内では、先の戦闘で鹵獲した敵の翔機、クシュートラム、を解体しス・ヴェーレの補強に転用している。

「このツノみたいのは使わないんですか?」


ジュンが不自然に置かれたツノらしきものを見て、近くにいた作業員に聞いた。

「あーそれは、特に使い道のない部品なんだよね。頭部についてることからなんらかの階級や所属を示してるものだとは思うんだけど… ま、使いたいなら言ってくれ、使い道は少ないだろうけど」


「そうですねぇ… これって戦闘行為にも耐えれますかね?」


「そうだね、強度は申し分ないはずだよ。どうしてだい?」


「いえ、これをですね—」


ジュンの翔機、ダグラス・アイアンの新しい武装、ガントレット型ナイフが両腕に一本ずつ装着された。大きさと強度は戦闘行為に向いており、強力な武器になるだろう。

「一応説明させてもらうよ。このガントレットはG-01が起動コードだ、ここのマニュアル式武装起動欄に… これだ、これを押せば手動で出てくる。あとは動作リンクとかの方法もあるけど… 今は声で起動できるように設定してあるよ」


「ありがとうございます!」


光線銃、レイガンは装弾数が少ない代わりに威力がある。だがそれでも接近戦に持ち込まれたら負けだ。かと言ってナイフ一本では心元がないのでこのガントレットを装備したというわけだ。ほんとなら剣が欲しかったけど… ま、今はいっか。

「君がダグラス・アイアンか?」


奥から近づく男が言った。

「ああ、そうだ。あんたは?」


「先の戦闘で助けてもらったフォーミュラ・アイアンだ」


「あんたか。御礼なら言わなくていいぞ」


「それでも言わせてくれ。ありがとう、君のおかげで助かった」


「戦場ってのはそういうもんだろ?あんたは見るからに軍人ではなさそうだけど、志願兵か?」


「ああ。私はデイン・ホムラだ、元はヒルトップ高校の二年生」


「奇遇だな、俺もあそこの生徒だ。ジュン・スラットリーだ、よろしくな」


一年生の俺らとは別棟にいる二年生と三年生、見覚えすらもない。が、同じ高校ってだけでも親近感は湧くものだ。

「食事はまだかな?まだなら私と一緒に食べないか?」


「いいぜ。あ、でも一人ついてくるかもしれないが構わないか?」


「君の友達かい?私は大歓迎だよ」

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