第7話:二人の少年
最後の一発を放ち、敵翔機に当たり爆散した。が、それはさっきまでの機体ではなかった、色が違う。突然、背後からものすごい衝撃を与えられた。味方を囮にしたのか!なんて卑劣!俺はその機体を蹴り、距離を稼いだ。向こうも満身創痍… 残ってる武器は… ナイフか!太ももにあるナイフを抜き、構える!両者、爆発する駆逐艦なんか気にも止めず、ただ一点にお互いを見つめる。一歩踏み入れたのは、向こうだった。スラスター全開で向かってくる相手は拳を構えて殴りにくる。俺はそれを左腕で受け止めてナイフで胸を刺した。直後、その機体の背後が分裂して飛んでいった。
『おいジュン!何逃してんだ!!』
「え?」
『敵翔機はなぁ、背後なんだよ!コックピットが!』
「ええ!先に言えよ!一番重要だろ!」
『テメェ上官に向かってなんて口の聞き方を…!』
キエルとの通話に割り入ってきたのはラーデム少佐だった。
『各員、よくやった。帰還してくれ』
残骸となった駆逐艦をあとにし、エンタープライズへ向かった。
宇宙の真ん中、ギュレイの緊急脱出ポッドに乗る少年、メイファス、怒りのあまり機内を殴っていた。
「ありえない!誇り高きガオグル艦隊がやられるなんて!それにあいつは…!あいつだけは許さない!02… アイアン02!グォーリー少尉の仇ぃ…!」
救難信号を発信しながら、それは漂流する。
レッドドック内の翔機格納庫に入れ、コックピットから出た。久々の重力に感動を覚える。見返すと、翔機の至る所に破損跡があり、改めて激戦だったのだと再認識させらた。リフトに乗っていると、ふとあるものが目に止まった。
「『アイアン02』…?」
「そいつぁオメェの機体番号だ」
下で先に待っていたキエルが言った。
「識別番号って事?」
「まぁそんなもんだ」
「へぇ… そういえばこの翔機って名前とかあるのか?機体名じゃなくて、ラデールみたいな総合名」
「オメェ、そんなんも知らずに乗り込んでたのか?呆れるぜ全く」
「勿体ぶらず言えって」
「こいつぁAIMF-69-L/S ス・ヴェーレだ」
AIMF-69-L/S ス・ヴェーレ… 番号的にも、最新型なのか。珍しいな。
『レッドドックにいるパイロット及び志願兵の皆さん、艦橋までお越しください』
女性のアナウンスが告げた。すぐさまエレベーターに乗り艦橋へと向かった。艦橋に着くとそこにいた全員が俺らに向けて拍手を送った。
「誰一人として欠けることなく生還してくれてありがとう」
ラーデム少佐が言った。そうだ、この戦闘で俺らは初陣にも関わらず、戦死者を出さずに勝った。
「本艦は予定通り地球へ向かう。敵駆逐艦から燃料を拝借すればもう少し早く着くだろう、それまでの辛抱だ」
この艦橋にいるクルーはラーデム少佐含め7人だけだ、空母を動かすにはあまりにも足りない。通路を歩きながらそんな事を考えてた。
「ジュン、敵はどんなんだった」
キエルが突然、突拍子もなく聞いた。
「どんなんって… あの赤黒い機体色と獣の様なフェイスはとても悍ましい… ぐらいか?」
「情けはなかったのか?躊躇いは?恐怖は?」
「恐怖はあった、初陣とは比べ物にならないけど、多少はあった」
「恐怖は忘れるな、それは生への執着だ。恐怖を忘れた奴から死んでいく。覚えとけよ」
珍しくいいこと言うなぁ。そんなこと言ったら殴られそうだけど。
宇宙の真ん中を彷徨う一つの鉄の塊。それに一隻のクエンタ級巡洋艦ワーシアスが近づく。その側面には大きく異国、いや、異星の言語が刻まれていた。ワーシアスは浮遊する鉄の塊を飲み込むと、旋回し着た道へと帰っていった。
格納庫には鉄の塊と複数の翔機が格納されていた。すると、鉄の塊が開き、中から少年が出てきた。
「ギュウジィ少尉!ご無事で何よりです!」
「至急、この艦の艦長に合わせて欲しい」
「え?えぇ、まぁ一応確認はしてきます」
「アイアン02… 待ってろよ、今にも貴様の心臓を抉り出してやる…!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます