第6話:接敵

航空母艦エンタープライズの艦橋は薄暗く、所々回路が剥き出しになっている。90年も前の船だ、ここまでボロくなるのは想定外だ。

「ラーデム少佐!敵を視認しました!」


「よぉし、速度を維持したままだ!駆逐艦ではないのだから、くれぐれも気をつけろよ」


正面モニターに映し出される敵の軍艦。あれはマスレルカ級駆逐艦とハズルカ級航空駆逐艦、どれもこの空母より足が速い。

「アイアン小隊、交戦します!」


四方八方から光線が飛び交う。翔機には対光線シールドシステムが搭載されてるが、5発撃ち込まれれば限界を迎えるような、気休めにしかならない物だ。

『動き回れよ!出来るだけ接近するぞッ!』


キエルさんの機体の跡を飛ぶ。光線が掠るたびにシールドの残り強度を示すメーターが減っていく。震える機体の振動がコックピットまで伝わるのが分かる。

『スレッド・アイアン!近づきすぎだ!』


『フォーミュラ・アイアン被弾!クッソ!』


『おい!ロータス・アイアン!そいつは諦めろ!』


翔機内の無線で怒鳴り合う男たち。モニターからも見て分かる、ラデールが一機被弾した。あれは助からない。

『!!敵翔機、出てきたぞ!俺とゴルジェ・アイアン分隊で対処する!他は艦砲とエンジンだ!!』


こんなハズではなかった。私は… もっと戦えると思っていたのに。ゲームの世界では優秀でも、現実ではそうはいかないと言うことか…

『フォーミュラ・アイアン!3Dジャイロ・システムに切り替えろッ!』


「ガンドさん!」


『あるハズだ、探せ!使いこなせるかは置いといて、それを使ってエンタープライズに帰還だ!』


私は必死に探した。3Dジャイロ・システム… どれだ?ボタンが多すぎる!3DGS…?これか!ボタンを押すと真ん中にあったレバーが下がり、右に新しいレバーと左にボールのようなものが出てきた。

『その機体は特殊でな… ボールの回転で機体を回転できる』


レバーを倒すと、通常なら下に行くのがブーストに置き換わっていた。左右に倒すと、体勢を維持したまま左右に動いた。

「これは…!凄いです!」


『だがそいつは燃料に消費は激しい。くれぐれも使いすぎるなよ!』


ラデールがまるで自分の体かのように動く、光線も綺麗に避けれる!この機体は凄い!。私はレバーを倒し、敵駆逐艦まで突っ走った。振動に耐えながら、飛び交う光線をボールを転がし避ける。このボールの機能も理解した。これはラデールと連動しているのだ。機体の位置を変えず回せると言うことだ。こんな画期的な技術、なぜ廃棄処分に?

『フォーミュラ・アイアン!突っ走りすぎだ!』


「安心してください!私がこの戦い終わらせますよ!」


このシステムを活用して、敵の正面に辿り着いた。まっすぐ来る光線を最も容易く躱し、艦砲を破壊する!次々と来る光線も、まるで事前に知っていたかのように避けれる。光線はまっすぐ進む、銃口の位置さえ把握していれば、簡単に避けれる!艦砲を破壊していき、裏に回りエンジンに集中砲火した。被弾したエンジンは大きな爆発とともに光を失い、駆逐艦は戦闘不能になった。

「一隻撃破!」


この調子でもう二隻も…!あれ?動かない!?

『馬鹿野郎!燃料の使いすぎだ!』


モニターの一つに燃料切れの警告が出ていた。宇宙空間で身動きが取れない状態、非常にまずい。これでは格好の的ではないか。駆逐艦の銃口がこちらを睨んでいる。あぁ、これは…助からない—

目の前が暗くなった。死んだのか?宇宙空間に投げ出されたのか?恐る恐る目を開けると、影の正体は一機の翔機だった。

『フォーミュラ・アイアン、大丈夫?』


「ダグラス・アイアン!?君こそ大丈夫なのか!?」


『咄嗟に船の残骸を盾にした、あんたを一旦安全なとこに移すよ』


そう言うと、ダグラス・アイアンは私のラデールを優しく持ち、大破した駆逐艦の影に隠した。


フォーミュラ・アイアンをあとにして、残りの駆逐艦に向かった。まだ翔機が二機残ってる、どちらも味方機と交戦中だ。俺は燃料切れのタンクを切り離し、予備タンクに切り替え、向かった。

光線銃を片手に突っ走り、敵翔機に撃った。当たらなかったが、味方機から引き離すことができた。駆逐艦の上の乗り、その翔機と一騎打ちの状況になった。敵は弾切れ、俺の残り弾数は… 2発か。まずは一発撃つ、がそれは避けられ、駆逐艦の艦橋に当たり爆発した。それによってできた煙幕に隠れた翔機。残り一発!これで決めなければ…!目の節に、動く影をとらえた。

「そこかぁ!」


最後の一発を放ち、敵翔機に当たり爆散した。

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