第2話:ランド・オブ・ヘル
造船所に入って数分後、俺はU.E.A.に捕まった。数名の武装した兵士に取り押さえられ、尋問室にぶち込まれ、只今絶賛ご説教中だ。
「どうして入ったッ!」
「いやだから、こっちに入っていく人影が見えたんで注意しにいっただけですって」
ガタイの良い男が机を叩きながら怒鳴る。こういう大人にはなりたくないね。
「嘘をつくんじゃない!カメラにはお前しか映っていたなかったぞ!」
「はぁ?んなわけないでしょ。俺が入る数分前、ちゃんと5人ぐらいいましたよ」
確かに黒い服でカメラには写りにくいかもしれないが、全く見えないというわけではないはずだろ。
「とにかく、もう一回確認してきてくださいよ」
男は不機嫌そうに俺を睨んだ。ちょうどそんな時、一人の男が入ってきた。
「やぁ、君がジュン・スラットリーだね」
男は背の高い金髪の赤眼だった。入ってきた瞬間、俺を怒鳴っていた男は鎮まり、敬礼していた。
「ラーデム少佐!ここは私だけで…」
「いや、いい。君は十分やったよ。釈放したまえ」
「え?なぜでしょうか?」
「見れば分かるだろう?彼は丸腰で不審な点はない。それに彼は… いやいい。とりあえず彼は僕が車で送ろう」
彼は俺に天井を外し付いてくるように指示した。言われた通りラーデムの後ろをついていく。外に出ると、黒い高級車が止まっていた。
「あれが僕の車だ」
適当に相槌を打ち、車に乗り込む。車内にはすでに先客がいた。
「おいおい、まじで釈放しちまうんすか?」
「別に良いだろ?害はないわけだし。さぁ、ジュン君、君の家はどこだい?」
運転席のラーデムがミラー越しに問いかけた。
「シェーリー通りで下ろしてもらえれば」
「そうかい?じゃあ出発だ」
静かな運転で道路を進む。車内ではラジオから流れる音楽とそのリズムに乗って口ずさむラーデムの声しかなかった。俺ともう一人の軍人はお互いに外の景色を眺めてるだけだった。ラーデムは40は超えてるだろう。顔の皺や白髪で大体はわかる。にしても少佐か。親父も… いや、忘れよう。
ラーデムの声で起こされた。どうやら寝ている間に目的地に着いたらしい。あたりは街灯が少ないからか、ものすごく暗い。
「じゃ、またいつかね。ちゃんと家に帰るんだぞ」
「送っていただきありがとうございます」
ラーデムはニコッと笑い去っていった。さぁ、今日はもう眠い。流石に学校に連絡は行くかな?嫌だなぁ反省文書くの。風呂は明日入ろ— 爆発音!?地面からも爆発の振動が伝わる… どこで?
さっきいた造船所の方で、淡いオレンジ色の眩しい光と黒い煙が何箇所から出ていた。襲撃されたんだ。
近隣住宅の窓から騒ぎを聞きつけ頭をのぞかせる住民。遠くからは救急車や悲鳴が聞こえる。途端、後ろからも爆発音が聞こえた。近い。振り返ると、次々と爆発していく— いや、爆撃されていく。上空には、親指ほどの大きさの、飛行物体がいくつも飛んでいた。その飛行物体は、見たことある。あれは、テスチアル帝国の、軍艦だ。
俺は走った。行き先は、セリンの家だ。道路では車が暴れ、歩道では人が逃げ惑っている。セリンは逃げたかもしれない、けどもしかしたらまだいるかもしれない。俺は確信もなく、ただただ走った。家は無事だった。周りもまだ被弾していない。ドアを開け名前を叫ぶが返事はない。薄暗い家を遠くの火事が照らす、轟音と共に強くなる光。よかった…
セリンは逃げてる。俺も早くシェルターへ向かおう。
家を出た瞬間、目の前の家に鉄の塊が落ちた。人の形をした、鉄の機械。それは翔機と呼ばれる、兵器だ。その倒れた翔機に向かって、もう一機が近づく。配色は黒と緑、左肩には見覚えのあるエンブレムが描かれていた、その下には英文字でU.E.S.F.と綴られていた、友軍機だ。その味方翔機は手に持っている銃で仰向けの翔機にトドメを刺した。銃から放たれる光線と爆音でどうにかなりそうだった。役目を終え、次の戦場に飛び立とうとした瞬間、遠くから狙撃され、地面に尻餅を着いた。その瞬間、敵機がかっ飛んできて右手の斧で格闘戦を挑んだ。スラスターの爆風に耐えながら俺は傍観していた。降りかかってくる斧を左手でガードし、右手で太もものナイフを取り、敵の装甲を抉った。鉄と鉄のぶつかる音で耳がいかれそうだ。そんなこともお構いなく、両者はひたすらと格闘する。敵の斧が友軍機の胸に打撃を与えたと同時に、友軍機は足で敵を吹っ飛ばした。両者倒れ込むが、先に手を打ったのは友軍機に方だった。落ちていた銃で敵の胸を貫いた、力が抜けたように敵は倒れ込んで、沈黙した。友軍機も、力を使い切ったかのように静止した。俺は咄嗟に友軍機に向かって走っていった。
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