宇宙戦争録〜STARDUST LEGION〜

不細工マスク

第1話:パイロット

西暦2150年、地球外生命体からの攻撃により地上の50%を非定住区域にされ、宇宙進出を余儀なくされた地球人類。地球外生命体、テスチアン、と幾度なく戦い続けた併合地球軍、通称U.E.Aは和平条件である「太陽系外に定住してはならない」を飲み、2200年現在に至る。

「当時の陸軍元帥の、えー、エイジ・シミヤが和平交渉の場に行き、えー、当時のテスチアル帝国の帝国王であるグジュリム4世と直々に対談した。ここハイライトしとけよ」


歴史の退屈な授業を聴き流しながら左に見える造船所を見つめる。この学校は高いところに建てられてるからわりかしよく見える。4つの造船ドックのうち2つが稼働し、宇宙艦が出来上がっていく。そんな光景を学期が始まってからずっと見ている。毎日見るのは特段宇宙艦が好きとかではない。雲が面白い形をしていたら眺める、それと同じさ。

チャイムが鳴り授業が終わった。先生が一言二言言った後に教室を後にし、室内は生徒の声で満たされた。昼飯の時間だ。カバンに入ってるカツサンドを取り出して頬張る。そんな俺に誰かが話しかけてきた。

「ねぇねぇ、ジュン!さっきの内容、説明してくれない?ほら私、途中で寝ちゃってたでしょ?」


「俺も授業は聞いちゃいねぇよ。お前は友達が多いんだから他を当たれ」


「えーでも、ジュンってこういうの詳しいじゃん!毎回私でも分かるように説明してくれるから、おねがーい!」


「… しゃーねぇな。放課後、ジョニィズでな」


彼女はセリン、中学の時からの知り合いだ。ジョニィズはファミレスだ、火星じゃ一番の人気がある。

火星、地球人類が定住するもう一つの惑星。この星の首都は元々軍事目的での意味合いでマーズ・フロントラインと呼ばれていたが、終戦後は名残を残しつつマーズラインに改名された。今では地球人類の半数が火星に住んでる。

1日の授業が終わり、セリンと共に最寄りのジョニィズに向かった。窓際のカウンター席に座り、適当に注文を済まして勉強会を開始した。俺は昔から歴史が好きだった。小学校の頃から歴史の大半を覚え、中学に上がる頃には知らないことはなかった。だからだろうか、全てを知っているからこそ、授業が退屈に思える。

授業内容を一通り教え終わった頃にはもう辺りは真っ暗だった。セリンとは自宅の方向が真逆だからファミレスで別れ、一人街路を歩いた。ヘッドライトで顔を照らして去っていく車にイラつきを覚えながらもまっすぐ帰路に着く。この時間帯は人が程よい感じに居て、歩きの邪魔にならないから嫌いではないな。

分かれ道、ふと左の道に注意がいく。右の道をまっすぐいけば自宅だが、左に行けば造船所だ。特に気にかけなかったが、造船所はどんな感じなんだろう?そっちにいけば、何か分かるような、心のモヤモヤが晴れるような感じがした。うん、行ってみよう。

造船所は大きなクレーターを囲むようにできてると地図で見たことある。クレーターの1/4が造船所で残りは軍事施設らしい。まぁそんなこともあってか、フェンスで入れないようになってる。当たり前か。学校から見るのが一番いいのかもしれないなと思いつつフェンスを辿ってみる。単なる暇つぶしか、興味本位からか。家に帰っても、俺一人だし、ちょうどいい暇つぶしかもしれない。

そんな時だった。奥の方でフェンス辺りで何かをする数人の影を見た。よく見ると、フェンスを破っていた。若い学生たちが侵入してるのか?注意した方がいいのか?でも… 入ってもいいんじゃないか?彼らを注意する為に入ったって言えばある程度は許されるはずだ。捕まっても迷惑をかける親がいないし、行ってみるか。

フェンスの空いた穴を潜り抜け、奥に見える建物に走っていった。

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