第11話 シェイド・セントラル①
「全っ然休まらん……」
ベッドに伏せり、意識を落としてすぐ、目を覚ましたそこは見覚えのある部屋だった。
「――というかホントに夢ちゃうんかったんやな……」
「あ、クシナも起きたんだね。おはよう」
寝覚めに最適な心地良い挨拶が聞こえ、微睡んだ瞳をそちらに向けると、ニコニコと嬉しそうにして笑うアーラの姿が映る。
「ああ、おはようさん」
「……どうしたの? まだ眠い?」
「いや、ちょっと慣れんくて」
「えっ? 大丈夫? 水持ってこようか?」
「大丈夫大丈夫。あー、でも水は欲しいかも」
「わかったよ! 持ってくるね」
そう言ってアーラは部屋を出て行った。
全く眠った気分にもならないのに、しっかりと寝起きの気だるい感じが身体を支配している。その感覚に違和感を覚えつつ、ふとフェイレスに声をかける。
「なあ、悪魔。今って朝なんか?」
『ええ、時間にして八時ですね』
「いや、遅刻やん。こっち来てたら学校行かれへんやん」
違う世界を行き来しているのも初めてでそこまで頭は回らなかったが、こっちの朝は現実世界でも朝なのではないか。
『そこはご安心を。貴方が眠っている時間を消費して、こちらにいる世界へと干渉しています。貴方の住む世界での時間はまだ日も跨っていませんよ』
「そうなんや。まあ理屈は分からんけど」
『考えようですよ。眠っている時間もお金を稼ぐために使えるようになったと、そう考えて頂ければ』
「……そんな美味い話あるんか?」
『意外と、貴方が知らないだけで美味しい話は転がっていますよ。情報、あるいは知識は武器になります』
「まあ、せやな。……というかこれアッチの世界で起きても疲れ取れてないとかあるんちゃう?」
『ご安心を。あちらの世界ではしっかりと眠っているので、身体への負担はありませんよ』
悪魔の話は半信半疑だが、その事実はいま確認が難しい。
まあ、こっちの世界に来てしまったし、やることをやろうと、櫛奈の決心がついて、アーラが水を持って戻ってきた。
「はい、クシナ」
「あ、ありがとうな」
コップに口をつけ、ひと息に飲み干す。その様子をも、アーラはニコニコと見守っている。
「ん、なんかウチの顔についてる?」
「え、ううん! 綺麗な顔だなあって見てただけだよ!」
ストレートにそう言ってくれる彼女に、櫛奈は言葉を詰まらせる。思わぬカウンターだ。そんなのアーラも可愛い顔をしているよとか、そんなに褒めても何も出ないとか、返しに迷って結局話題を転換することにした。
「そうや。今日ってさ、なんか依頼こなすって話やったやん?」
「あ、そうそう。今日はね、街に行こうと思ってて」
「街?」
「そう。シェイド・セントラル。この国で一番の繁華街だよ!」
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