第17話 勝利の余韻と海への道

バーンフェルドとの激闘が終わり、森には再び静寂が戻っていた。燃え盛っていた炎はアークとフレイア、そしてノームの力で完全に鎮められ、辺りには湿った空気が漂っている。森の木々はまだ焦げ跡が残っていたが、生命の息吹が感じられた。


「やったな……」アークは肩で息をしながら拳を握りしめ、ふと見上げた空にほっとしたような笑みを浮かべた。


「そうだな……だが、油断はするな」フレイアもウインドソウルを握りしめたまま、警戒を解かない様子だった。彼女の瞳はまだ戦士の鋭さを保っていた。


二人が感じたのは、ただの勝利ではなかった。バーンフェルドとの戦いは、彼らの絆をより一層強くし、精霊の力を引き出す方法を学ぶ過程でもあった。水と風を合わせた力で、バーンフェルドを打ち破った瞬間の感触がまだ彼らの心に強く残っている。


「お前、いい動きだったぞ」フレイアがアークに向かって軽く頷いた。


「お前もな。ウインドソウル、やっぱりすげぇ力だ……」アークは感心したように彼女の剣を見つめた。


その時、ノームが地面にちょこちょこと近づき、可愛らしい前足で「お疲れさま!」と書いた。鼻をピクピク動かしながら、誇らしげに見上げるその姿に、アークは笑い声を漏らした。


「おい、ノーム、こんなキャラだったのか?」アークは突っ込みを入れながら、頭を撫でた。


ノームは少し得意げに鼻を鳴らし、地面に「仕事中は頑張る!」と素早く書き足した。その仕草にフレイアも思わず微笑む。


「よくやった、ノーム。お前がいなければ、ここまで来られなかっただろう」フレイアは優しい眼差しでノームを見つめた。



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戦いが終わり、森の残された炎も完全に消えた。アークとフレイア、そしてノームはしばらくその場に立ち尽くし、勝利の余韻に浸っていたが、やがて次に進むべき道について話し始めた。


「次はどうする?」フレイアが静かに尋ねた。「バーンフェルドを倒したが、魔王軍が完全に消えたわけじゃない。さらに大きな戦いが待っているかもしれない。」


「確かにな……バーンフェルドはただの一兵に過ぎなかった。俺たちはもっと力をつける必要がある」アークは眉をひそめ、ふと考え込むように地面を見つめた。


その時、ノームがまた地面に文字を書き始めた。「海へ行こう!」


「海?」フレイアは不思議そうにノームの書いた文字を読み返した。「なぜ急に海なんだ?」


アークも驚いたようにノームを見つめる。ノームはしばらく鼻をピクピクさせていたが、少し誇らしげに「海にはさらに強い水の力がある」と地面に書き足した。


「なるほど……湖の精霊が言っていた、海の力か」アークは目を細め、ノームの言葉に納得するように頷いた。「湖の力だけじゃまだ足りない。海の力なら、さらに強大な魔王軍にも対抗できるかもしれないな。」


「だが、海は遠い。精霊の森を出てから、長い旅になるだろう」フレイアは冷静に分析した。


「それでも行く価値はある」アークは決然とした表情で答えた。「俺たちには精霊の力がある。それを引き出すためにも、もっと強い力を手に入れないと。」


フレイアはアークの決意を感じ取り、小さく頷いた。「わかった。海に向かおう。お前の言う通りだ、私たちにはさらなる力が必要だ」



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エルフの里に戻った二人は、長老たちにこれから海に向かうことを伝えた。長老たちはバーンフェルドを倒した二人の力を称賛しながらも、魔王軍のさらなる脅威を危惧していた。


「お前たちが海に向かうというのは、確かに良い選択かもしれぬ。しかし、海には我々が知らぬ未知の力が眠っている。慎重に進むことだ」長老は静かだが重厚な口調で告げた。その声には長い年月を経たエルフらしい威厳が滲んでいた。


「湖の精霊の力を引き出したとはいえ、海の力はそれとは異なる。お前たちが行くべきだと感じるのならば、精霊もまた導いてくれるだろう。だが、決して油断してはならぬ」


長老の言葉は、優しさと共に重みを持って響いていた。フレイアはその言葉に深く頷き、決意を新たにした。


「もちろん、私たちは精霊の導きを信じ、慎重に進みます。しかし、今こそ海の力を手に入れる時です。それがさらなる戦いに必要なことは間違いありません」


「精霊の加護がお前たちにあらんことを。道中の無事を祈っている」長老は厳かな声でそう告げると、アークとフレイアに見送りの目を向けた。



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こうして、アーク、フレイア、そしてノームは次なる目的地、海へと向かうことを決意した。

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