第11話 エルフの里への再訪
「この剣、なぜこんなに力が不安定なんだ……」
フレイアは手にした魔法剣をじっと見つめながら呟いた。この剣はエルフの技術で作られた強力な武器であるが、戦いの最中にその力が突然途切れてしまうことが多く、信頼性に欠けていた。彼女の戦士としての本能は、この不安定な武器を使い続けることに強い不安を感じていた。
「これではこれからの戦いは……」
その言葉に、アークは静かに頷いた。「確かにな。エルフの技術で作られた剣なら、何か理由があるはずだ。ここで悩んでいても解決はしない。長老に話を聞きに行こう。」
「…長老?エルフの里のか。お前にとってエルフの里は……辛くないか?」フレイアはアークを見つめ、言葉を続けた。「追放された身だ。戻るのは、きついだろう。」
アークは少しだけ視線を逸らし、険しい表情を浮かべたが、すぐに肩をすくめた。「気は進まないが、今はそんなことを言っている場合じゃない。フレイアの剣が頼りにならないままじゃ、危険だ。それに、長老に会って解決策を探るのが一番だろう。」
「……すまない、アーク。感謝する。」フレイアは深く頷き、剣を腰に戻した。「エルフの里に行こう。長老が何か知っているはずだ。」
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エルフの里は、森の奥深くにひっそりと広がっていた。木々に溶け込むように作られた住居は、自然との調和を感じさせ、美しい光景が広がっていた。風が木々の葉を揺らし、ささやくような音が耳に届く。その静かな雰囲気は神秘的で、どこか緊張感すら漂わせていた。
「ここがエルフの里か……本当に、自然と共に生きているんだな。」フレイアはその光景に目を奪われ、静かに言葉を漏らした。
「見た目だけなら、な。」アークは無表情でその里を見渡したが、そこにはかつての自分の居場所はもうなかった。追放された者として、この場所は彼にとって苦い記憶を呼び起こす場所となっていた。
エルフたちがアークの姿を見つけると、ざわめきが里全体に広がった。「あの者は……」「あのオークではないか…」とささやきが漏れ聞こえてくる。
「どうして戻ってきたんだ……?」
フレイアはそのざわめきを気にする様子もなく、アークに向かって静かに言った。「気にするな、アーク。今は目的を果たすことに集中しよう。」
「……わかってるさ。」アークは肩をすくめてため息をつき、フレイアと共に長老の住居へと向かった。
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里の中心に位置する長老の住居は、エルフの知恵と歴史を象徴するかのように佇んでいた。木々に囲まれたその家は、厳かで、まるで森と一体化しているかのような静寂を保っていた。
アークとフレイアは長老の住居に通され、すぐに長老と対面することになった。長老は白髪の老エルフで、深いしわが顔に刻まれていたが、その瞳には鋭い光が宿っていた。彼はアークを一瞥したが、そのままフレイアに向き直り、静かに口を開いた。
「アーク、そして人間の騎士よ……何の用だ?再びこの地を訪れるとは、何があったのか?」長老の声は静かだが、その中には深い重みがあった。
フレイアは一歩前に進み、持っていた剣を差し出した。「長老、この剣の力が不安定なのです。戦いの最中に力を失ってしまい、頼りになりません。この剣をどうにかして、完全に使えるようにする方法はないでしょうか?」
長老は剣を手に取り、静かにその剣を見つめた。微かな光が剣の刃に宿っていたが、その光は不安定で揺れていた。長老はしばらくの間沈黙し、じっくりと剣を観察してから、ゆっくりと口を開いた。
「この剣は『ウインドソウル』と呼ばれるものだ。エルフの友に授けられる特別な剣で、風の精霊と契約してその力を引き出す。しかし、今の状態ではその精霊の加護が失われている。」
「ウインドソウル……その力を完全に引き出すには、どうすればいいのでしょうか?」フレイアは真剣な表情で尋ねた。
「ウインドソウルの力を取り戻すためには、精霊の森での儀式が必要だ。精霊の森には、エルフたちが代々守り続けてきた契約の場所がある。そこに行き、精霊と再び契約を結ぶことで、この剣の力は再び目覚めるだろう。」長老は静かに答えた。
アークは腕を組みながら、少し考え込むように言った。「精霊の森か……行くのは簡単じゃないと聞いたが。」
「その通りだ。精霊の森は厳しい試練の地でもある。力だけではなく、心の清さ、そして覚悟も試される。試練に打ち勝てば、精霊はお前たちを認め、剣に力を与えるだろう。」長老の言葉には、重々しさがこもっていた。
フレイアは剣を握り直し、決意を固めた。「試練が何であれ、この剣の力を取り戻すためにやるべきことは全てやる。どうか、精霊の森への道を教えてください。」
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長老は静かに頷いた。「精霊の森へ向かうには案内人が必要だ。道は険しく、迷いやすい。誰もがたどり着ける場所ではない。」そう言いながら、長老は部屋の隅を指差した。
そこから現れたのは、小さなモグラのような生き物だった。彼の体は丸く、短い毛に覆われていて、愛らしい姿をしている。前足は大きく発達しており、土を掘るために進化したかのように見えた。彼は慎重にアークとフレイアの前まで進むと、小さな前足で地面を掘り始めた。
「こいつはノームだ。精霊の森を知り尽くしている。彼がお前たちを案内するだろう。」長老は静かに紹介した。
ノームは愛らしい動きで、前足を使って地面に文字を書いた。「よろしく」と。
「ふむ、可愛らしい案内人だな……」フレイアは微笑みながら、ノームに向かって軽く頭を下げた。「よろしく頼む、ノーム。」
ノームは鼻をピクピクと動かし、前足で「行こうか?」と再び地面に書いた。
アークはそれを見て、少し笑みを浮かべた。「案内人としては小さいが、頼りにしているぜ。」
ノームは「任せて」と前足で地面に文字を書き、鼻をピクピクと動かした。フレイアはノームの愛らしい姿に微笑を浮かべたが、その内に秘められた確かな力を感じ取っていた。
「頼もしい案内人がいるなら、安心だな。」フレイアは、少し硬い口調を崩さずに言った。
アークも軽く肩をすくめ、「ま、見た目以上に頼りになりそうだ。」と冗談交じりに言いつつ、少し先を歩き始めた。
ノームは、地面に「準備できた?」と書き、その後またすぐに先頭に立ち、軽やかに土の感触を確認しながら進み出した。彼の足取りには自信があり、まるで森そのものに馴染んでいるかのようだった。
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