第93話 タスマン海航空戦8
第2次攻撃隊が米艦隊を猛襲していた頃、入れ違いに二航艦にも敵編隊が迫っていた。
「電探に感あり、数、200」
「いよいよ山場か...」
緊急で後方の艦隊の鷹野型補給艦から零戦一〇〇機あまりが補給されており、先の空襲で生き残った戦闘機、そして第一次攻撃隊の戦闘機と合わせて一八〇機の零戦が防空体制についていた。
第一航空艦隊の生き残りの飛龍、蒼龍は艦載機を第二航空艦隊に移したうえで後ろに下げてある。
そのため、阿賀野型、最上型、改古鷹型の12隻の防空巡洋艦が二航艦に集結していた。
駆逐艦も30隻は軽く超えている。
上空を埋め尽くす零戦達は数十機ごとに編隊を組み、敵編隊に向かっていった。
上空で敵味方乱れて戦い始め、乱戦が展開される。
ほぼ同数の迎撃隊と攻撃隊がぶつかったのだ、当然、戦闘機の割合が高い方が優勢だ。
「対空戦闘用意!」
大小様々な対空砲弾、機銃弾が雨あられとうちあげられ、弾幕のカーテンをつくる。
星を散りばめたように曳光弾が空を横切り、高角砲弾の色とりどりの爆発によって空はカラフルに染まる。
12隻の防空艦から吐き出される弾幕の量は、それこそサウスダコタ級を凌駕するほどのものだった。
迎撃の戦闘機との戦闘で既にその大半の機体を失っていた米軍の攻撃隊にとって、それは悪夢でしか無かった。
錐揉みしながらバステーター攻撃機は機首から海面に激突し、海面に落ちる対空砲弾がつくる水柱の中にひときわ大きい水柱をつくった。
止むことのない熾烈な対空砲火は、日本海軍のどの戦いでも類を見ない規模だったであろう。
しかし、やはり問題があった。
高角砲と機銃の隙間を埋める存在、40ミリ程度の大口径機関砲の存在がなかったことである。
そのため内輪に突入できたのは僅か6機のSBDドーントレス爆撃機だったのにもかかわらず、それを撃墜する手立てがなかったのだ。
「来たか...」
狙われたのは2列に航行する第二航空艦隊の先頭の二隻「雲龍」「笠置」だった。
回避行動を取るべく両艦は舵を切り、弧を描くように艦列から離れた。
「敵機投弾!」
敵急降下爆撃機から黒い粒が切り離され、真下の「雲龍」に向かってゆく。
「雲龍」は回避行動をしているものの被弾は避けられそうになかった。
「間に合わんな」
直後、雲龍の飛行甲板左舷後部に1000ポンド爆弾が命中した。
猛烈な爆発と衝撃が起こり、飛行甲板の破孔がめくれ上がる。
2発目はその少し前部に命中した。
甲板脇の機銃座に直撃したのか、一帯の機銃弾に誘爆して、あたかも導火線に火がついたかのように甲板脇を伝って爆発は広がっていった。
「笠置」に命中したのは1発のみだった。
しかし、昇降していた前部エレベーターの穴に入り込み下部格納庫内で爆発したのだ、運が悪かったとしか言いようがない。
あっという間に燃料タンクと弾薬に火が周り、「笠置」は内部から燃え始めた。
2隻は空母としては完全に使い物にならなくなっていた。
そして、米軍の攻撃隊も数機を残して全滅した。
山口はこの程度の被害で済んだことに安堵していた。
「第2次攻撃隊指揮官機より通信、敵空母3隻、戦艦2隻を撃沈、空母2隻大破」
「となると、残りは2隻か...いや、護送空母が後衛にいるかもしれんな」
こちらの空母は雲龍型4隻、飛龍型2隻、しかしオーストラリアの基地航空隊も含めると依然、我が方が劣勢だ。
「キャンベラ空襲とフィジー・サモア攻略は諦めるしかないでしょうね」
奥宮少佐はそういった。
確かに出撃時には790機(2個航空艦隊合計)もあった艦載機は今では300機にまで減っている。
その数ではキャンベラ空襲とフィジー・サモアへの上陸支援を両方こなすことは難しいだろう。
「いや、できないことはないぞ」
だが、まだ残っているものがあった。
「どうするんですか?」
「第二艦隊があるじゃないか。また近藤の出番だ」
※ ※ ※
他の作品の連載をするため、だいぶ亀更新になります。
また、今更ですが一年半前の文と今の文でかなり差が出ていることに気づいたのと、90話以前はカクヨムではないところ(ロイロノートという学校のアプリ)で書いたのをコピペしたものなので、色々不備があったりして、時間ができたらそのうち、1話〜50話あたりを改稿するつもりです(行間あけたり、多少加筆します)。
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