第87話 タスマン海航空戦2
電探員の報告を聞く限り、敵攻撃隊は数機から十数機ごとの小編隊がいくつも波状的に飛来してきていた。
「米軍はまともな編隊運動もできないのか」
小沢は宝龍の艦橋で水平線を睨みながらそう呆れる。
「まあ、米軍も連戦でパイロットは相当消耗しているでしょうし、新米隊員は練度が不足しているのでしょうね」
参謀は暗にこちらの搭乗員も消耗していることを言う。
「それに波状攻撃は迎撃する側としてはやりづらいでしょうし」
航空参謀の源田実中佐が指摘する。小沢は相槌を打つと、迎撃に向かう零戦の編隊を眺めた。
80海里(150km)離れた二航艦はまだ敵に見つかっていないようで目下200機以上と推定される敵攻撃隊の全ては一航艦の六隻の空母に向かってきていた。
2個航空艦隊の迎撃機はその殆どを一航艦上空に集結させ、その数は120機にも及ぶ。無論、全て零戦であり、こんなに数が多いのは第2次攻撃隊として待機していた零戦も出撃させたからである。艦隊の前方でついに戦いの火蓋が切られ上空を固めた零戦が敵編隊に襲いかかる。
その時、低空を飛行していた敵雷撃機と思わしき編隊がくるりと身を翻し零戦に反撃を行った。完全に想定外だった零戦は数機をジュラルミンの火球に変えられる。他の場所でも同じようなことが起っていた。
「まさか...」
小沢は同期の戦下手の井上のこと、珊瑚海海戦の戦闘報告書を脳裏に浮かべた。
「神龍迎撃隊より通信〝敵機は全て戦闘機なり、我が方劣勢、至急支援を求む〟」
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「宝龍型航空母艦」
〈諸元〉
基準排水量:38.200トン
全長:252.5m
全幅:34.9m
速力:31.9ノット
〈武装〉
12.7㎝連装高角砲10基
25㎜3連装機銃18基、連装20基
〈搭載機数〉
常用84機、補用18機
〈同型艦〉
宝龍、神龍、鶏龍、海龍
〈概要〉
伊勢型、扶桑型戦艦の「伊勢」「日向」「扶桑」「山城」を空母に改装したもの。予算自体は③計画で用意され、艦首、艦尾の延長、機関の変換、バルジの装着などを経て赤城や加賀に並ぶ高速大型空母になった。艦橋は建造中止になった大鳳型のテストヘッドとされ、煙突と一体化している(隼鷹型も同)。雲龍型の設計を各所に流用して低コスト化を図った他、一度最下甲板までひっぺがし、格納庫面積を最大にすべく効率的に上部構造を組み直された。そのため搭載機数は帝国海軍の空母史上最大の102機(赤城などは小型の複葉機時代には100機ぐらい積んだともあったが)になり、高い艦影が特徴的である。日本初の開放式格納庫を採用した空母でもある。
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