第84話 索敵2 in タスマン海
また、米軍は珊瑚海海戦で使っていることが確認された護衛空母を後方に置き艦載機の補充に充てる戦法を取っているので、護衛空母も4隻以上は居るかもしれない。
ただ、こちらも各個撃破されるわけにはいかないので必要があれば一航艦ど合流或いは連携し敵を撃破するつもりだ。その場合は予定していたフィジー攻略を延期せざるおえない。二式艦上偵察機は増槽を取り付け発艦していった。FS作戦の主眼は豪州の戦争からの脱落だが、ついでに迎撃に来た米空母を掃討することこそがまずやらなければならないことだ。そして数時間後、索敵に出していた1式水偵から敵艦隊発見の報告が入った。
「敵艦隊は空母3、巡洋艦2、駆逐艦10。距離500海里、二航艦より」
その後の音信は無かったので撃墜されたのかと思われたが、少しして敵戦闘機を振り切ったことも報告してきた。その後、程なくしてその敵部隊の200海里ほど西に空母3隻から成る敵艦隊も発見された。そして別の報告では両者の中間地点に戦艦4隻、空母1隻の部隊が布陣していることも確認された。端の部隊は索敵段線の一番端の機が発見していたのであれだけ索敵機を放っておいて良かったと山口は内心でほっとしていた。
「空母7隻、戦艦4隻ですか...」
参謀の奥宮正武少佐が漏らす。彼は第7航空戦隊の参謀でだったが山口が気に入ったので2航艦の参謀になっていた。正武は航空機の操縦経験があるので山口には大いに参考になっていた。
「珊瑚海で確かに2隻の空母を損傷させたのだが...。新鋭艦か?しかし...」
空母7隻に第2航空艦隊のみで攻撃を挑むのは心もとないし、米軍のヨークタウン級は90機の艦載機を搭載できるから雲龍型の57機では個艦の差も著しい。
「米国の工業力は底なしですから2ヶ月そこらで深手の空母を復旧させたとしてもおかしくないでしょう」
参謀の言葉で空母の出所についての思考タイムは終わった。
「となると、7隻のうち、2隻はワスプとレンジャー、他はヨークタウン級と仮定するのが最適か。小沢さんに電信だな」
第一航空艦隊には既に敵艦隊発見の報は送っているが支援についてはまだだった。直ちに第二航空艦隊に向けて電信が放たれる。
「合流には時間がかかりそうですね」
彼我の距離は1000km以上離れており、巡航速度である20ノットで両者が合流するには14時間程かかる。敵艦隊との距離もそれぐらいであり、ちょうど合流する頃には艦載機の戦闘半径に入るはずだ。ブリスベンへの攻撃とニューカレドニア、バヌアツ攻略はしばらくお預けとなった。
程なくして一航艦から返答があり合流が決定された。山口は米空母の数が想定以上に多かったことについて若干気に留めていたが、考えたところでどうこうできる問題ではない。なにより、索敵網は四方八方に張り巡らせており偵察機が逃した敵艦隊がいる可能性は低かった。七隻が米国の正規空母の全てであり、それを沈めればFS作戦の遂行は問題なくできるだろう。
だが豪州の陸上機しだいではこちらが劣勢になることもあり得るだろうし珊瑚海のようにB17の束魚雷攻撃にも警戒しなければならないから陸地とはそれなりに距離を取らなければならない。そしてこちらが敵機動部隊を発見したということはこちらももう見つかってもおかしくないだろう。山口の予想は当たり、敵艦隊発見の第一報から二時間弱したころ、SBDドーントレスの偵察中隊が第二航空艦隊に飛来、電信を発した。
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