第75話 金剛型VSノースカロライナ級2
敵1番艦の斉射は金剛から少し右に離れたところに着弾し、艦橋と同じぐらいの高さの水柱が立った。それもそのはず敵艦が斉射した直後、近藤は左舷回頭を命じたので敵の射撃の未来予測位置から外れたのだった。それだけ離れていても空気を通じて振動が伝わってくる。
恐ろしや、恐ろしや。やはり内心ではそう思わざるおえない。金剛型の原型である英国のクイーンエリザベス級戦艦は一次大戦のジュトランド海戦にてドイツ巡洋戦艦の30センチ砲弾を2,3発被弾しただけで轟沈していた。金剛型は当時の戦訓を参考にだいぶ近代化改装されているが、やはり装甲は35センチ砲弾に耐えられるものではない。それが大重量の40センチ砲弾をくらったら一撃轟沈もあり得た。敵2番艦はなかなか霧島に夾叉をできていないが、この距離での精度としては敵ながらあっぱれだと感じた。距離的には25000を切ったところだが、もはやこれ以上受け身のままでいるわけにはいかなかった。
「射撃を許可する、敵に一泡吹かせてやれ!」
近藤は第3戦隊司令の栗田健男少将に命じる。
「は。...金剛、霧島は敵1番艦、比叡、榛名は敵2番艦。てっ」
栗田は大佐時に金剛の艦長を勤めていたこともあり金剛型の扱いについては指揮官クラスでは誰よりも熟知していた。そして交互射撃もせずに、着弾修正もないまま8門の35.6㎝砲が火を吹く。普通に考えたら馬鹿のやることである。だが近藤には策があった。
「せっかくの砲撃戦だ、楽しませてもらわないとな」
4隻、32発の砲弾はそれぞれ16発づつ敵艦にぶっ飛ぶ。そして敵艦の近傍、空中で炸裂した。束の間、まるで花火の様に敵艦の上空が紅色の火球で満たされた。
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「二番砲塔、
「第4副砲、応答なし!」
リーを含む殆どの将兵にとって、起こったことが理解できなかった。ただ、報告がまとまるにつれノースカロライナの船体全体が小口径機銃を無数に被弾したように損傷していることが分かった。事態がはっきりしたのは敵艦の第2斉射であった。リーはくっきりと空中でショットガンを撃ったように(それもとてつもなく大きな)無数の火球が降り注いだのを認めた。しかるところ、敵艦隊はクラスター爆弾を砲弾にして対艦戦闘で使用したということだ。
「コンゴウタイプが真珠湾を砲撃した際、
情報参謀がやっとのことで思い出した事を言ったので、とりあえず敵が何をしたかは分かったが、逆にリーにはその意味が理解できなかった。その間にも変針した敵艦に対して再び交互射撃が開始され、前回よりも早く敵艦を夾叉した。だがそこに来て当たりどころが悪かったのか敵のクラスター弾がレーダーを傷つけ使用不能にしてしまった。更に艦の各所にクラスター弾の子爆弾が命中しており、少しづつ戦闘には大きな影響を与えないが艦の損傷が広がっているのが分かった。
ノースカロライナが第3斉射を放ったときだった。一瞬で敵2番艦が闇夜に浮かび上がり、業火に包まれ日本の戦艦の特徴的な
敵の戦艦がそれぞれ砲撃を続ける中でその艦は沈黙していたことからも戦闘能力を奪ったことは確かだった。ノースカロライナの乗員達はワシントンに負けじと第4斉射を放つ。だがそれは敵艦から見当違いの場所に着弾した。レーダーが損傷したため目視射撃に切り替えたからだった。
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