第72話 大迎撃
パグは第二次攻撃隊の戦闘機部隊を率いていた。度重なる戦闘で第5群の戦闘機部隊は壊滅し、第9群の戦闘機は階級の低い者しかいなかったので臨時でパグが大隊長になったのだった。現在時刻は5月5日午後4時を下ったところである。
今回の第2次攻撃隊は5隻150機近くの大編成であり、軽空母3隻ほどの敵艦隊にこれをぶつければおつりがくるほど圧倒的だった。その代わりヨークタウンはもう爆弾がない(被雷時に誘爆の危険性があるものは投棄していた)ので攻撃隊は出せないしロングアイランド級は甲板が狭く練度が低い第9群のパイロットには着艦が難しいので第2次攻撃隊はヨークタウンに着艦することになっていた。ロングアイランド級は各艦が21機しか艦載していないので大規模攻撃隊はこれっきりであり逆に言うと第2次攻撃隊は敵艦隊を壊滅させなければいけないということだ。
「大隊長!前方に敵編隊!数...100機あまりです!水偵も混ざっています」
突如レシーバーから前衛の戦闘機中隊の隊長から報告が飛んできた。ジャップは水偵や艦爆や艦攻を出して悪あがきでもするつもりか?....。このとき水偵という報告に、少数と補足があったならパグは判断を間違っていなかったかもしれない。だが、これを艦載機総出で迎撃にあたってきたと思い込んだパグは戦闘機部隊にこれを掃討するよう命じた。
前衛が敵と交戦しはじめたところでそれは判明した、大部分の敵機はゼロファイターではない新型の戦闘機だったのだ。それは圧倒的な空戦性能でF4Fを押していた。100対42、しかも敵は新型。ここにきてパグは唖然とするのであった。
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「陸軍の奴ら、派手にやってますね」
一式水偵の後部座席の電信員(登場二回目にして名無し)が前方で敵機と交戦する陸軍の戦闘機を見て言う。
「たしか鍾馗とか言う名前だったな」
三友はそう返すがその目は交戦域を迂回して進軍する敵攻撃隊に向いていた。二式戦闘機鍾馗、それはドイツよりライセンス生産したBMW801D-2空冷発動機を積んだ陸軍の最新鋭戦闘機である。
設計段階からフォッケウルフ Fw190やメッサーシュミット Bf109が参考にされており史実とはかけ離れた性能と性格を持っていた。発動機の大型化は機体の大型化を招いたが、BMW801D-2の優れた馬力によって史実の設計と大差無い大きさに落ち着いている。第十戦隊の阿賀野型艦載の一式水偵24機に加えて第七戦隊の最上型の艦載一式水偵12機の36機が三友の麾下にあった。
「全機突撃!目標、敵攻撃隊!」
零戦と鍾馗の連合部隊が敵戦闘機を圧倒している間に一式水偵は鈍足な爆撃機や攻撃機に襲いかかった。爆装や雷装をしている爆攻撃機に対し、身軽で戦闘機並の速度を出せる一式水偵はそのあいまを縫いながら次々と敵機を火球に変えた。そうしている間にもF4Fを粗方片付けた鍾馗や零戦も攻撃隊への攻撃に加勢する。クシを抜くように敵機は次々と墜ちていく。それでもまだ40機が残っており艦隊に襲いかかろうとしていた。
だが、阿賀野型、最上型の超速射砲がこれを迎え撃つ。戦闘機の攻撃を弾幕を張って防ぐために密集していた攻撃隊に15.5糎砲弾が容赦なく鉄片の雨をお見舞いした。あっという間に敵機が束になって墜落し、残る敵機も高角砲で粉砕する。辛うじて反転した敵機は戦闘機が10機単位で襲いかかる。そうして米軍の第二次攻撃隊は幸運にも逃げることができた数機を除いて全滅したのであった。
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