第69話 迎撃2
上空での乱戦は留まることがなかった。全体的には防御する側である日本側の方が航空機の損失は少なかったが、米軍の攻撃隊の艦攻や艦爆はまだ相当数が健在でありこれらが如何に艦隊に損害を与えるかで結果は決まるので、そうなると継続戦闘能力が高い米軍の方が有利だった。
「砲熕兵装は航空機にはかなわぬか」
主砲の旋回が敵機に追従できなくなり射撃をやめたところで三川は思わず漏らした。左舷と艦橋前方の10㎝高角砲が絶え間なく射撃を続け、敵編隊に相当な数の砲弾を叩きこんでいるが期待したように一気に敵機が墜ちるようなことはなく、まばらに時々煙を吐いて高度を下げたり、空中で四散する機体が見えるだけだった。それでも高角砲は奮闘しているといえるだろう。
先頭をゆく敵機の一群が25㎜機銃の射程に入り、甲板上に大量に設置された機銃座から無数の弾丸が吐き出される。
敵編隊は前衛の何群かが急降下爆撃機でその後方から魚雷を積んだ攻撃機が来ていた。前衛の敵機の内の何機かが阿賀野に急降下を開始した。艦長の鹿沼が主舵を命じたのでなんとか回避できたが、後続の能代が回避しきれずに被弾し炎上していた。
「能代より入電、『我、被弾1ナリモ損害軽微、戦闘航行支障ナシ』」
報告の間にも、回頭で乱れた陣形を突いて敵機は輪形陣の内側へ進入し、空母5隻へ攻撃を敢行していた。まず十勝、太田、筑後の順番に飛行甲板に黒い塊が吸い込まれ、250㎏爆弾が容赦なく飛行甲板を貫いて格納庫内で炸裂した。
瞬く間に太田は弾薬に誘爆し大爆発が起こり轟沈。十勝は機関がやられたことで戦列を離れ、間もなく敵雷撃機の攻撃で魚雷が何本も直撃し、ひっくり返るようにあっという間に沈んだ。旗艦の筑後は司令部の面々が内火艇で吉野に移動した後にも、海上で轟々と燃え続けていた。
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三神と高橋の九九艦爆は遂に米艦隊を視界に捉えていた。数十分前、遂に偵察機が敵艦隊を発見したのだ。前方では護衛の零戦とF4Fが死闘を繰り広げているがおかげでまだ攻撃隊の被撃墜機はなかった。龍驤やら蛟龍やら空母を転々としてきた二人だが今は庄の航空隊に所属していた。
ちなめに艦名が一文字の唯一の空母なんだとか(駆逐艦では潮や暁など一文字は結構ある)。最近は空母が続々と竣工するので海軍省は命名に困り、今までの空を連想する名前に加えて戦艦に使われる旧国名や巡洋戦艦の山岳名、十勝型に限っては巡洋艦の河川名も空母に使ってもアリにしている。
「あの艦橋がデカいのがサラトガ、奥のがヨークタウン級だ。本中隊は手前のサラトガを太田の艦爆隊と共同で叩く。全機突撃せよ!」
三神はレシーバーで僚機に命じた。十勝型の搭載航空隊は小さいので三神はマレーでの戦果を買われ艦爆の中隊長となっていた。階級は中隊自体が小さいので少佐のままであるが。その時、前方の筑後中隊の艦爆がいきなり火を吹いて爆発した。
「敵機右後方!」
太陽を背に少数機のF4Fが奇襲を仕掛けてきたようだった。高橋は後部旋回機銃に手を掛け同じように攻撃を仕掛けてくる敵機に射撃した。編隊は密集し8本の火箭の弾幕を張る。
もちろん、威嚇程度にしかならない。6機のF4Fは分かれ、筑後、庄、太田の各爆撃中隊に2機づつ向かってきた。筑後中隊は次々と墜とされるが三神の庄中隊は巧みに回避運動をし、まだ一機も失っていなかった。
護衛の零戦が何機か反転しF4Fを蹴散らす。そうしている間にも敵艦隊の対空砲の射程内に入ったようで大量の5インチ弾が編隊を襲った。F4Fは引き返し、速度が遅いため後から来た九七式艦攻に向かった。
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