第65話 水中からの強襲2
潜望鏡深度まで浮上した伊号第二百四潜水艦はかなり近いところに敵艦の灯りがあることを認めていた。使ったら自らの位置もバレるアクティブ・ソナーと違ってパッシブ・ソナーでは得られる情報が少ないが位置を変えて測定すれば距離と位置もおおまかに計算できるため三郷はそれを行なっていた。
「聴音の観測通りの配置だな。あれは...」
潜望鏡ごしで曇っているが、確かに上空の星が瞬いたのが見えた。敵機だ!。
「魚雷1から4番、てっぇ!」
レシーバーごしに三郷は命じた。敵機がいる以上さっさと潜航しなければ。
「1番から4番、発射!」
前部魚雷室から発射の報告が届いた時、ボファー―という大きな音が聞こえた。
潜望鏡がら見える視界が明るくなり光点が幾つも物凄い速度でこちら近づいているのが見えた。
「急速潜航!急げ!」
本能的に三郷は命じた。タンクにあっという間に海水が流れ込み空気が排出される。三郷は潜望鏡を畳んだ。乗組員が急いで潜航作業をする中、やっと艦全体が水中に入ったであろうころ、聴音手がいきなり立った。
「着水音、直上!」
次の瞬間、艦全体を包み込む衝撃と振動が乗組員を襲った。衝撃は1回ではなかった。艦内の照明が赤い非常用ランプに切り替わり我に返った乗員が急いで水が漏れ出ているパイプを直したりとしているとき、被害の全容が報告された。
「艦上部の3ヵ所に被弾、浸水が発生しています。5つの区画を封鎖しましたが、艦の航行に支障はありません」
だが損傷個所ができてしまった以上、敵水上艦のソナーはこちらを捉え執拗に攻撃してくるだろう。
「全速で本海域を離脱せよ!」
のちにこの攻撃に参加した中で唯一生還した艦になるとは三郷は知る由もなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「やられたかっ!」
鈍い遠雷の音がした後、行き足が止まった空母ヨークタウンが後方に佇んでいた。左舷に傾斜したその姿は航空機の発艦が到底無理になったことを示していた。
「ヨークタウンより通信、被雷2、
「護衛に駆逐艦4隻を分派させろ。くそっ!ジャップめ!」
空母ホブカークスヒルの艦橋でさっきと違ってフレッチャーは怒鳴り散らかし始めた。
新兵器の磁器探知機が搭載されていた
「敵機動部隊は小型空母6隻ですが、このうち5隻が前進を続けているようです。1隻については昼頃、陸軍の攻撃で大破に追い込み落伍させたと先ほど連絡がありました」
またしても報告がはいった
「陸軍の報告遅すぎない?まあいいか。ということは敵の艦載機の総数は150機前後か。こちらは第9群の護衛空母4隻とヨークタウン、ツラギ空襲での損耗分は除いても160機だから微妙だな」
フレデリックが呟く。
「敵部隊がこちらの艦載機の戦闘半径に入るのはいつになりそうだ?」
フレッチャーはさっきからわめいていたのをやめ、軍服を整えてから言った。現在時刻は5月5日の2時を下ろうとしていた。
「6時から7時ごろです。そして発艦した艦載機が攻撃を交わすのは30分後でしょう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます