第56話 薪束
最上型防空巡洋艦、それは軽巡、重巡、防空巡と艦種を巡り巡ってきた艦級であった。重巡に改装される際、技研が開発中の速射砲の試作型が完成したため名目上は重巡に改装したことにして試作砲の増産型を搭載した防空巡洋艦として完成したのだ。15.5糎速射砲は日本の砲技術の集大成であり軍機事項であった。
試作砲だった為、装填機構に不具合が多く散布界が広かったのでマレーやハワイではあまり活躍できなかったが今まで空母の整備で使われていたドックがやっと空いたのでその機を逃さず4月中に8日間で4隻とも主砲塔を阿賀野型に搭載されている最新型に改装した。
徹夜の速攻工事だったため不具合もあったが明石型工作艦の補修によって全て正常に動作するようになった。
その防空巡が本領である対空射撃を開始したのだ。井上は効果を見定めようと上空を凝視した。はるか上空に黒点がいくつも見えた。
その周囲で突如爆発が発生した。このとき井上は知らなかったが最上型の主砲である65口径九七式15.5糎速射両用砲B型は初弾に試験的に電波反応弾を撃っていた。
これは砲弾自体が電波を放ち反射した電波に反応して距離が近かった場合炸裂するという代物である。
最近、砲研が新たに開発したもので今の技術では費用対効果が馬鹿にならず通常砲弾の何倍もする値段と量産性にかける設計のため実用化は相当後とのことだったが小型化と量産化ができれば戦局を大きく変えることが予想された。
砲弾は炸裂したものの花火のようにパチパチと火球が散っただけであった。しかしそれこそが目的である。
電波反応弾が炸裂した高度を俯角と飛翔時間、初速と重力、空気抵抗から割り出し最上型はその高度に炸裂するよう三式弾の時限信管を調節したうえで砲撃を再開した。
時限信管弾以外にも高度測定機能がある気圧信管弾や飛行機の微弱なエンジン排煙の熱を探知して炸裂する熱探知弾があるが実用性に問題があり開発進行も芳しくない。
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高度およそ7300mを飛行するB17、46機は突如爆風に見舞われた。翼に弾片が当たり鈍い金属音が機体内に響くのを聞いて編隊長のレヴィーランドンは日本軍がただならぬ兵器を持っていると感づいた。
「まさかこの高度に砲弾が飛んできたっていうんですか?しかもこんなに正確に!ジャップがそんなことできるわけがない!」
副操縦士がやたら喚いている間にも砲弾は立て続けに来た。砲弾の頻度は5秒もなかったし、威力は高角砲とは桁違いであった。1分もしないうちに最初の犠牲が出た。サイアス大尉の9番機が右翼第二エンジンより火を噴きながら異常なほど右に傾いて高度を下げ始めたのが眼下に見えた。レヴィーはレシーバーを手に取ると大声で散会を命じた。
「全機散会せよ!」
散会して間もなく敵の対空砲火は特定の1機に集中して放たれるようになった。物凄い速射力と威力を持つ敵の対空砲はあっという間にB17を絡め取る。
「22番機被弾!」
「11番機失速しています、応答ありません!」
機内の無線が各機のパイロットの悲鳴で満たされた頃には編隊は既に7機を失っていた。だが敵艦隊にずいぶん近づいたところで敵の対空砲火はピタリと止んだ。高度1万メートルを飛行するB17とでは俯角が限界だったのだろう。代わりに高角砲の射撃が始まったようだがこちらは大して脅威ではなさそうだった。
「
敵艦隊のおよそ直上に達したところでレヴィーは命じた
「
はっきり言ってこの荷物ーパイロットの間では
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