第49話 騒乱
ー内務省ー
内務大臣の湯沢は内務省の一室で部下たちと帝都空襲の報を受け、全警察機関に消火、救助活動を命じ、各所から報告される情報から暴動が起きないよう情報統制を行い各所に指示を飛ばしていた。一部では陸軍機が撃墜されたというデマも出回っていたが警察機関は軍の下の立場なので詳細は掴めなかった。また、陸軍が勝手に封鎖線を敷いているところもあった。そんな時に首相の腹心が訪ねてきたことのことから湯沢は彼を応接室で迎え入れた。
「湯沢三千男内務大臣様、失礼します。緊急の報があって来ました」
訪ねてきたのは内閣総理大臣東條英機の右腕と言われる所務の丹羽桐人だった。
「この事態にご苦労。その報とは何かね?」
湯沢は口調から尋常ではないことが起きたことを悟り、緊張した口調で訪ねた。丹羽は額の汗をハンケチで拭うと一呼吸おいて改まった口調で話し始めた。
「先程正午前後、水戸を視察予定の東條英機現内閣総理大臣が搭乗していた一〇〇式輸送機が市街地上空で敵機に撃墜されました。現在、陸軍駐屯隊が現場に封鎖線を敷き救助活動にあたっていますが首相の生死は不明であります。この救助活動に協力している栃木警察にまず感謝します」
首相が生死不明とは.....!。湯沢は絶句した。陸軍大臣を兼務している東條首相がもし亡くなられれば政府内、いや国家内の混乱は収まるところがないだろう。下手をすれば大東亜戦争にも影響が出るかもしれない!栃木警察が救助に協力しているとは初耳であった。軍が箝口令を敷いているから上まで情報が届かなかったのだろう。丹羽は口を開いた。
「このような事態が発生したため、臨時的に湯沢三千男内務大臣を総理大臣に昇格、湯沢臨時内閣を設立することが決定いたしました」
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