第48話 本土空襲
海岸線はすぐそこまで迫っていた。3機編隊の中で一番機は横に並ぶ二番機、三番機と挟まれた位置にあった
「ウォンペイ開け!」
ドーリットルは海岸がずいぶん後ろにいき尾根を超えたところですぐに命じた。眼下には日本の木造建築が所狭しに敷き詰められて屋根の瓦がうねっているような光景が広がっていた。それの間を縫うように縦横に走った細い路地や太い街道には黒点のような人影や車が見えた。
「
爆撃手がレーバーを倒し爆弾倉を開いた。その時、火箭が機首を横切り数発がガラスを撃ち砕いた。
「右前方に
敵戦闘機4機が2機づつに分かれて左右前方から攻撃してきた。機銃手がありったけのM2、12.7㍉機銃を叩き込む。九六式艦上戦闘機、通称クロードは日中戦争時の旧式機だが低空戦闘では侮れない。それにこちらは爆撃機だ、流石に最高速度はB25の方が上なので振り切るが、クロードの7.7㍉弾は翼を穴だらけにさせた。そこで目標の水戸市街地が見え始めた。一際大きい市庁舎と思わしき洋風建築の建物が見える。編隊は少しずつ上昇していく。
「投弾開始!」
完全に街の上空に達したところでドーリットルは命令した。投下するのは焼夷弾128発を束ねたM54集束焼夷弾各機2発づつで編隊で6発である。投下された焼夷弾は空中で子爆弾数百発に分裂し市街地に降り注いだ。パパッパっとあたり一面で発火するのが見えたがその時には新たに前方から来た5機の敵戦闘機の回避に苦心しておりそれどころではなかった。5機を振り切った編隊はそこで前方から来る双発機を認めた。
「中尉、どうしますか?」
3番機のパイロットから通信が入る。
「
そして短かく命令した。
「
すかさず3機は機首の旋回式12.7ミリ機銃を輸送機に叩き込んだ。このB25B型を改修した機体には更に機首に固定式の7.7㍉機銃が2基設置されていた。胴体にブローニング弾を叩き込まれた敵輸送機は若干ふらついた。そしてその火箭はミシンを縫うように機首へとなぞり、機首のガラスに穴がたて続けにあいた。一瞬、ガラスの内側が赤い染まったのが見えたような気がしたがそれは機首が他の機の銃撃で粉砕されたため確かめようがなかった。制御を失った輸送機は糸が切れた人形のように落下し木造家屋が密集するあたりに墜落し爆発した。
「後方から敵機接近!
後方機銃座の隊員からレシーバーで報告が届く。
「上昇せよ!。全速力で回避する!続いて500ポンド爆弾及び500ポンド特殊爆弾を順次投下開始せよ」
「
編隊は上昇に移る前に500ポンド特殊爆弾を尾根を超えたところに見えたダムに、通常爆弾はその先の市街地に投下した。ダムには編隊が投下した3発のうち1発が命中、決壊し湖の水が容赦なく下流の街を襲った。
他の2発も周辺施設に着弾したようだった。市街地に落とされた500ポンド通常爆弾は完全にオーバーキルで家屋が一瞬で何十軒も吹き飛ぶのが確認できた。ボロ切れのように人の形をしたものが無数に巻き上がっていた。
果たして、この16機のうちのたった3機の行動が如何に線局に与える影響など微妙なものだとドーリットルは考えていたが、実際は日本を震撼させることをしていたことを知る由もなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます