第40話 反省会
会議室に出席していたのは連合艦隊司令長官山本五十六、第一航空艦隊司令官南雲忠一、第二航空艦隊司令官山口多聞、第一次南遣艦隊司令官小沢治三郎、第二艦隊司令官近藤信竹、第三艦隊司令官高橋伊望、GF司令部の黒島亀人などの主要参謀、また現場の状況を知るべく各航空戦隊、戦隊の司令官が一部出席していた。まず南雲が立って報告を始めた。
「単刀直入に言ってハワイ作戦の加賀、マレー沖海戦の龍驤の損失は直掩機の不足にあると考えられます。少なくとも第一航空艦隊が攻撃を受けた際、上空には40機前後の零戦が上空直掩機として展開していました。米軍のB17は零戦の飛行高度を優に超えた高度、つまり高空では零戦は飛行するのが精一杯なのですね。米軍は幾度にも渡る波状攻撃で直掩機を遠ざけた後、急降下爆撃機による攻撃で加賀を戦闘不能にしました。これはタイミング的には偶然でしょうし、護衛艦艇の対空能力の向上もそうですが、直掩機を多くするしか対処法はないと思います」
言い終わるとすかさず第二航空艦隊司令官である山口が反論した。
「B17に対しては高角砲や三式弾で大きな損害を与えています。直掩機の増加もそうですが今回の最大のミスは敵空母と陸上基地の両方を相手にしようとしたからだと思います。一方を完全に無力化したと思い込んでしまったため我々には二正面作戦をしている実感はなかったですが実際はそうだったのです。それも距離が十分に離れている敵空母に対して。」
「加賀の損傷は被弾の損害よりもそれを原因とした誘爆によるものだったそうだな、」
山本が会議が始まって初めて口を開いた。
「確かに空母が被弾するリスクをできる限り減らすという山口中将の意見は理があるだろう」
会議はおおよそ空母の艦戦の割合を変更するという点で進められていった
「戦闘機とは一般的に防御兵器であり敵の航空機を削ぐ兵器です。いままで艦爆、艦攻、艦戦の比率はおよそ1:1:1でしたがこれでは攻撃隊の損耗が激しいというか自機の2倍以上の味方機を援護しなければならずかなりの負荷です。0.7:0.7:1.6ぐらいにしてより敵戦闘機に対して有利に立てれば制空権の確保や敵攻撃機の迎撃が容易になり艦爆、艦攻の損耗を低く抑えることができます」
一航艦航空参謀の草鹿が言った。
「それでは攻撃力が3割も低下するじゃないか!結果的にその瞬間にいかに戦力を投射できるかが重要だろう」
黒島が異論をとなえる。
「ですが戦闘機が少ない分敵戦闘機が攻撃隊の艦爆や艦攻を叩き落とします。結果的にとおっしゃるなら搭乗員の損失を抑えるならこれでは戦闘機が多いほうがいいではありませんか」
渡辺が言う。
「まあそうだな。確かに,,,」
黒島は参謀なので正直戦術面に口を出すものなのか。井上がそう思って見てると山本が話を振った。
「井上中将はどう思っているのか?」
これでも山本と海軍左派トリオとして個人的な友好を深めてきた仲だ。そして井上は空母をまとめて機動部隊を編成すると意見を具申した張本人であり、山本はそれの理解者だった。
「戦闘機の比率の増加は必要だと思いますが、ただ艦隊上空の直掩機を増やすだけなら祥鳳型や十勝型に戦闘機だけを積んで防空専用の空母にしてもいいと思います」
少し間を置いて小沢をチラ見しまた話し始めた。
「今、空技廠が戦闘爆撃機の開発を零戦の後続機と一緒にしていることを皆さんはしっていますか?戦闘〝爆撃機〟なのでまあ、戦闘機としての機能よりは爆撃機としての機能が重視されているようですが実用化されればこの問題も解決するでしょう」
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