第37話 北極海封鎖

第一航空艦隊に属すのは空母グラーフ・ツェッペリン、ペーター・シュトラッサー、ウェーザー、第3水雷戦隊のZ31型駆逐艦5隻だ。アルハンゲリスク攻撃には戦闘機30機を派遣して側方から敵迎撃機への攻撃を行い空軍の作戦を支援した。もちろん空母の搭載機は海軍機である。ペーター・シュトラッサー型航空母艦はアドミラル・ヒッパー型巡洋艦の未完成艦サイドリッツとリュッツオウを改造して建造された軽空母でグラーフ・ツェッペリンは建造が中止されていたのをヒトラーの総統命令で完成させたものである。それはまだ第二次世界大戦が始まる前、ドイツに技術交流で来た日本の造船技官がヒトラーに空母の価値と有用性を力説したのが始まりだった。それに感心し心服した総統は建造の中断されていたグラーフ・ツェッペリンを建造再開するよう命じるとともに既存船舶の空母改造についても研究するよう海軍に命じた。また空母を護衛するためのZ23型駆逐艦の対空バージョンであるZ31型の建造も行われた。グラーフ・ツェッペリンは就役が1940年だったがなんとかライン演習作戦に参加しビスマルクの危機を救っている。ビスマルクは地中海でイタリアの空母アクラとスパルヴィエロと共に英地中海艦隊の撃滅を行っており制海権の確保も近いと思われた。このときにグラーフ・ツェッペリンは引き返しバルト海へ向かったがそこにはビスマルクを追撃すべく出撃したイギリスの戦艦、キングジョージ5世とロドニー、巡洋戦艦レナウン、空母アークロイヤルが待ち構えたいた。幸いUボートの活躍でキングジョージ5世は航行不能になりグラーフ・ツェッペリンが損傷を負うことはなく逃げ切った。



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船団には夜明けから断続的に敵攻撃機が襲来し幾度かの攻撃で20隻弱の護衛艦艇は全滅した。不思議なことに輸送船には一切手が出されなかった。その日の初めに届いた通信と今までのソ連軍の通信傍受で船団はムルマンスクとアルハンゲリスクが壊滅し、もはや危険を冒してバレンツ海を横断する必要はないことを知った。護衛の艦艇がいなくなった今、商船はそれぞれ別々に帰路についたが前方に現れた艦隊を見てはめられたことを悟った。護衛艦艇はレーダーを搭載していたがいまは海の藻屑で、商船にそれは積んでおらず敵艦艇の接近を探知できなかった。降伏を勧告する電信を各商船は順次受信し、やがて後方から空母部隊が接近するのを見て遂に足を止めた。


「敵商船は40隻前後です。まもなく駆逐艦が拿捕を行います」


副官が報告する。


「これで戦局は大きく変わるだろうな、ソ連はレンドリース補給物資の40%近くを

北方航路に頼っている。ペルシア方面はUボートと日本軍が圧迫しているからソ連は今後苦戦を強いられるだろう。それにこの商船の補給物資、陸軍が喜ぶぞ、恩を売ってやる。」



「しかし、まさかここまで成功するとは」


副官が呟く。シュニーウィンドは顔をしかめた。


「総統の作戦が成功したのはこれが初めてなような気がするが。まあ結果的によかったが。それにしてもこれで我々が北極海にいる意味はなくなった。さて、地中海に行くか、それともアツタフィヨルドで一生を過ごすか、バルト海に留まるか。」 


「連合軍のアフリカ反抗が来年末までに開始されるとの見方が強いですから地中海に転戦ですかね」


ため息混じりに副官が言った。


「アスランドを迂回した封鎖突破か、厳しい戦いになるだろうな。ビスマルクのようにはいかないだろう。もしくは...」


英国本土上陸作戦リメンバー・ゼーレーヴェ、そう言いかけそうになってシュニーウィンドは口をつぐんだのだった。

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